第9話 「あはは、まだ治んねーんだ?」
「あはは、まだ治んねーんだ?」
「親父、よっぽど強く殴ったんだなー。」
「うかつだった。あそこに神さんがいるって、わかってたのに…」
卒業式の日、あたしをグラウンドの片隅で抱きしめた。
それを、父さんに見られてしまった。
父さんは、やきもち妬きだ。
いくら、父さんが
あたしを抱きしめたんじゃ、
父さんは、校舎の裏に逃げ込んだあたしたちを追って来て…
そして。
「俺だって我慢してるってのに、お前ふざけんな!」
おかしな説教をした。
母さんが言うには。
「も、
だそうで…
それに関しては、いろんな人の証言もある。
確かに、あの日も廊下で肩組んだりしてたもんなあ…
「
「えっ、あ…来週末から。」
「はえーな。旅行も行かれねーじゃん。」
「旅行?誰が。」
「おまえ。」
「誰と。」
「俺と。」
「……」
「…嘘だよ。ったく…かてぇ女だよな。」
そんなこと言いながら、
「…悪かったわね。かたい女で。」
唇を、とがらせる。
「じゃ、
「何?」
「小旅行。」
「小旅行?」
「そ。今んとこメンバーは俺と
あたしは手帳をのぞきこむ。
「
「
「…なるほど…」
「あ、悪い、一人誘っていいか?」
「ああ。女?」
「おう。」
「えっ、
「ちっがーう。
「
聞いてないな。
どうして、あたしじゃなくて
それに、いつから
それにしても…
二階堂本家の人間って、こういう他人の計画するイベントには顔出さないはずだけど。
それを知ってる
「何、
「うん。遠い親戚。」
「予定としては、行けて青海。最悪でも三日月湖。」
「いいねえ。いつ?」
「おまえ、来週から仕事だろ?」
「う゛ー…」
思わず、すねる。
だって、こういうことって初めてなんだもん。
「うっそ。今週中にしてやるよ。」
「本当?」
「しなきゃ、
すると。
「べっつに、俺はかまわないんだけどなー。」
って、
* * *
「ひゃっほーっ!」
なるほど。
最初の予定の六人から、倍の12人。
一番心配してた、
結局、行き先は青海でも三日月湖でもなく、電車で一時間の場所にある海。
当初予定してたメンバーなら、テント持って行ってキャンプって話も出てたんだけど…
八人を超えた時点で、
「
「おーお、何だかんだ言って、優しいねぇ。」
「だって、あいつが着てるブルゾン、あたしのなんだもん。」
三月だというのに、とっても暑い。
「…あれ?
気が付くと、
「さっき
…もしかして。
…まさかなあ。
タイプ的に、ちょっと似てるけどー…
似てるからこそ、選ばないような気がする。
…キスの相手…
うーん…
「……」
ちょっと待って。
と、いうことは。
今ここにいるのは…
な…なんか気まずいなあ…
あたしが、そんなこと思ってると。
「…あたし、遊んでこよーっと。」
「えっあっあああ
あたしの呼び止めも聞かずに、
「…あ…あたしも、遊んでこよっかなー…」
あたしがそっと立ち上がると。
「あっち行こーぜ。」
「えっ…あ…でも…」
遠慮がちに
「じゃ、俺もついて行くとするか。」
「えっ?」
「何だよ、おまえは。」
あたしの手を取った
「おまえこそ。」
「俺は、いんだよ。」
「…何、おまえらデキてんの?」
「やっやめてよ…こんなとこで…」
あたしが小さく言うと。
「
案の定、
「大丈夫っ!?お兄ちゃんっ!」
「…てめぇ…覚えてろよ。」
学校では冷血人間なんて言われてたけど、
「…そんなに、
あたしの問いかけに、
「合わない?合わないっつーんじゃねえんだよ。嫌いなんだよ。」
って。
子供みたいだな。
なんて思いながらため息ついてると。
「おまえも、あんな奴と仕事なんかすんなよ。」
って…あたしをにらみながら言ったのよ…。
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