7話

「ほう……?」


こちらを探るような眼で見てくる。

事実、ランドールは《魔眼》を有しており、対象の情報を読み取ることができる。

俺には効かないが。



「私の名を言い当てるとは……。どこかでお会いしたことがおありで?」

「あぁ、あるぞ」

「私には覚えが無いのですがねぇ。そもそもあなたは見たところ齢10といったところでしょうか。ここ数十年はほとんどここから出ていないので会う機会はなかったでしょうに」


数十年か。さすがに単位がでかい。


「まぁ、その通りだな。この姿では会ったことはない」



「とうことは真のお姿がおありで?」


余談だが、この間にも俺たちはお互いの打つ魔法を打ち消しあうというをしている。都合上、作業という言葉を使ったが、俺たちのレベルならというだけでシルに至っては役立たずだ口も挟めない


「今はこの姿が真の姿だけどな」



「今、導歴何年か知ってるか?」


ちなみに導歴とはこの世界の暦だ。

《勇者》の俺の死を境として作られたらしい。人の死を区切りにするとは何を考えているんだと知った時には思ったものだ。


「えぇ、もちろん。導歴659年では? さすがの私もそこまで俗世離れはしておりませんよ?」

「ならお前は導歴260年頃から誰かに仕えていなかったか?」

「---様のことでしょうか?」

「それが俺だ」



ゴウッ!!

ランドールの放つ魔法の威力が膨れ上がる。


「よりにもよってーーー様の名前を語るとは……。烏滸がましいおこがましい


まぁ名前の判別がつけられないからあいつが言ってるのが違うやつだったら話は別だけど。さすがにそんなことはないだろう。



「---様は82年の生涯の中で魔族の利権の安定のために尽くしてくれたお方。その実力は言うまでもなく、その慧眼にこそ我々は畏怖と敬意を抱いたものです」


そんな感じだったのか。


「最後まで若々しいままでいらっしゃったが、急にいなくなられてしまった」


年齢詐称はどうにでもなるし、たぶん転生して死体が無くなったんだな。


「そのーーー様を語るとは全魔族に対する宣戦布告ともとれる言葉ですよ」


そんな大ごとなの?



ガッシャァアアァァン!!!

轟音を響かせてプリュムが脱出してくる。


ーパパ! 出てこれたよ!-

ーよくやった! 人間になれるか?-

ーうん!-



プリュムが人間の姿に変身する。

一昨日は俺が変身させてあげたのにもう覚えたのか。


「じゃあ、シルと一緒にそこで待っててくれ」

「わかったよ! パパ!」

改めてだが、声に出してパパって言われるのはなんか、こう、言葉に出来ない何かがあるな。

この年で子持ちかよ……。



「ドラゴンが出てきましたか……。まぁいいでしょう。それより今はあなたです」


状況を整理し終えたランドールがこちらへ呼びかけてくる。


「あなたが私の主人だったと言うのならば、もちろんその実力を示してくださいますよね?」



「あぁ、胸を貸してやる。存分に試せ」

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