5話

シルを伴って森を歩いていく。

但し、《身体強化》を俺はもちろんシルにもかけているので速さは常人のそれではない。


「それにしてもドラゴンを捕獲する魔族なんて聞いたことがないんですけど……」

「確かにな」


彼らは他の種族に対して敬意を持っている。まぁ自分達が最も優れた種族だという自信のもとにその考えは成り立っているのだが、少なくとも人間よりは魔法適正が高く、身体能力も比べ物にならない。自信は妥当なものとも言えるだろう。


「今回はどうして捕まえたのでしょうか」

「そうだな……。人間が頼んだんじゃないか?」

「人間の頼みを簡単に聞くとは思いませんが……」

「そうでもないぞ」


そいつらの人間性が低くて、とるに足らぬと判断された場合、暇潰しのために願いを聞くことは考えられる。



「というかユウト様詳しすぎません?」


そりゃそうだ。


「魔王だったって言ったじゃん」

「あ、やっぱりそこの関係ですか……」



そんなことを話してるうちに件の場所に着いた。

洞窟があったが、奥の方は加工されていてかなり広くなっているようだ。


「《音響反射ソナー》」


蝙蝠が周囲を確認する方法を人間用にアレンジしたスキルで洞窟の内部の構造を把握する。

魔族とプリュムは同じく最下層にいるようだ。上の方には予想通り人間がたむろしている。

まぁ《音響反射》に気づかない時点でたいした奴等ではない。



「どうします?」


シルが聞いてくるので答えておく。


「正面突破だ」



洞窟に堂々と入っていくと、見張りをしていたらしい奴等が忠告してきた。


「止まれ! そして引き返せ! ここはお前みたいな子供を連れて来る場所ではない!」


ほぉー。俺がシルに連れてこられたと。そう言いたいわけか。


「あ、死にましたね、あの人たち……」


シルは悟りきった顔で彼らの来世を偲ぶ。


「馬鹿だなぁ、シル。悪人か決まった訳じゃないんだから殺すわけがないじゃないか」

「あ、そうなんですか?わたしはてっきり苦しめて殺すものだとばかり……」

「半分正解だな」

「半分?」



「苦しめるには苦しめるぞ。違うのは死を逃げ道にさせないということだ」


俺のものを奪いやがったんだ。死ごときに逃げさせてやるものか。


「《無限の死デス・マーチ》」


魔王時代に覚えた魔法だ。これをかけられて抵抗レジスト出来なかったものは日常生活の全てが苦行に変わり、死んでも同じとこからやり直しになるだけで終わることはない。

この魔法のいいところはかけたあとにその者は別に騒いだりすることもなく、廃人のようになるだけということだ。



洞窟はかなり枝分かれしていて、俺はまっすぐ最奥に行くつもりだが、後ろから襲われるのも面倒だな。


「《幻獣召喚》青龍」


召喚術師時代のスキルだ。

四神は各方角を司り、この世界において中心からの方角によって出せるものが限られるのだが、俺達のすんでる場所はそもそも中心から北東側にあるので東を司る青龍がだせる。


「他の道にいるやつらを近づけるな」



「こんなことを淡々とやってるユウト様の方がヤバイかもですー」


シルなんかには耳を貸さない。

さて、あいつがいれば後ろの心配はないし、仕上げといくか。


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