4話
朝、目が覚めてとりあえず不審に思った。
プリュムの気配が感じられないのである。そもそも竜とは存在としての大きさが桁違いだ。人間とは格が違う。たとえ人に化けていようがそれは変わらない。よって俺の感知がうまくいっていないというのは考えられない。
まぁそもそもありえないだろうが。
ということはプリュムは俺から半径10キル以内には本当にいないことになる。あいつは常識はないものの俺の言うことはよく聞いていた。自分から俺の言いつけを破るとは考えにくい。ということは攫われたのか?竜を攫えるような人間なんているはずもない。俺を除いて。ということは他種族か?
わざわざなぜだ。
考えを巡らせながら俺は昨日いた森へと歩く。このことを一応シルエラにも伝えておこうと思ったのだが、
「あ、ユウト様! 家借りてますよ!」
なんと
「ばれないようにしろって言ってただろ!」
「え!? だからこの家に《
「それだけじゃわかるやつにはわかる! 《
「使えませんよ!」
いやそんなことしてる暇はない。
「シル。昨晩からプリュムの位置がつかめない。心当たりはないか?」
「ユウト様に見つけられないんだったら私には無理ですよ……」
それもそうだ。
「ならいまから俺は全自己防衛魔法を
「襲ってくる人なんていないと思いますけど……」
「念には念を入れとかないとな」
「よし、やるぞ」
「はい、おまかせください。命に代えましてもお守りいたします」
「……。
昔もそんなこと言って真っ先に逃げなかったか?」
「あの時とは違いますから!」
慌てたように主張してくる。まぁいいか。
「
これでそこに費やしていた俺の魔力の一部が使用可能になる。
「普段ですら足元にも及ばないような魔力量なのにそれが5倍くらいに膨れ上がったんですけど……。どれだけ自己防衛に魔力使ってるんですか……」
うるさいな。集中させろ。使用可能な魔力全てを《
「《範囲監視》」
さっきシルが俺の魔力量が5倍になったといったが概ね正しい。よって俺の監視できる範囲は50キル程度になっている。
「見つけた」
ここから北東に40キル程度のところにプリュムの気配がある。その近くにこれまた大きな存在がいる。
「魔族だな」
「魔族ですか!? あの残虐で有名な!?」
魔族とは悪魔王の子だ。子といっても直系はあまりおらず、ほとんどがその直系の子孫たちではあるが。奴らは自ら人間と関わろうとすることはあまりないが、自分たちに害を為そうとするやつらにはどんな手でも使って排除すると有名である。
「でも変ですね。魔族相手で幼いとはいえ、プリュムさんが無抵抗で捕まるとは思えないんですけど」
そこなんだよな。プリュムはまだ成長できていないが今のままでもかなりの強さを誇る。なぜむざむざ捕まっているのだろう。戦闘があったなら存在値が跳ね上がるから気づいただろうに。
ま、聞けば済む話だ。
「行くぞ、シル」
「はい、お供します」
俺の憤怒を感じ取ったのか、いつもよりへりくだって応答してくる。
「俺のものに手を出したらどうなるのか刻み込んでやる」
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