6話

さて、そろそろ最深部に近いし試してみるか。


ープリュム。聞こえるかー


思念を通して呼びかけてみる。


ー!ー


向こうから驚いたような反応が帰ってくる。とりあえずは無事なようだ。


ーなんで捕まってるんだ?ー

ーわからない。いつの間にかここにいたー


あれ? お前こんなに流暢にしゃべれたっけ?


ーパパが教えてくれた。だから覚えたー


おぉ、覚えがいいにも程があるぞ。


ーなぜ脱出しなかったんだ?ー

ーパパに人間を傷つけるなって言われた。ここで逃げようとしたら周りにいる人たち傷つけちゃうー


なるほど。俺の言いつけを律儀に守ってたのか。


ー確かに言ったが、自分が悪意に晒されている時は別だ。今は俺が許可する。脱出してこい!ー

ーでも人間じゃない人もいるよ? 強そうなのー


魔族のことか。


ー俺がどうにかする。気にするなー

ーわかったー



ヒョオオオォ。

奥からとんでもない冷気が溢れてくる。プリュムが脱出を開始したらしい。

俺は自己防衛魔法で対応できるが、シルは何重にも防寒魔法をかけている。さすがの強さだな、ドラゴン。


「で、魔族はどうするんですかユウト様?」

「まぁ任せとけって」



堂々と魔族の目の前に姿を現す。


「フッフッフッ。外から何やら強い人間が入ってきているのはわかっていましたが、中に入ってから折角存在感を隠していたのに私の前に現れるとは。命知らずなことですね」


シャープな顔のキレが強めのイケメンが普通の人間ならそこで魂を奪われるような笑顔で嗤う。

確かに《存在零化アン・イクス》をかけていたが、地上の時点でばれていたか。



「人間にしてはなかなかやるようですが私には及ばないのが道理。なぜわざわざここへ?」


自分に挑んでくる人間に久しぶりに会ったのが嬉しいのか問答を楽しんでる節があるな。


「その道理が間違っているから俺がここに立ってるんだよ」


その一言と共に俺は臨戦態勢に入る。


「まだまだお話を楽しみたかったのですが仕方ありませんね。お相手致しましょう」



「そうですね。とりあえずは《無限の死デス・マーチ》」

「効かねーよ」


魔族が出してきた使魔法に抵抗レジストし、無効化してみせる。


「素晴らしい! 私の《無限の死》に耐えられる者などそうはいません!その小さな体ながらさぞ高名な術者でいらっしゃるのでしょう!」

「いや、小さな村の一少年だよ」

「御冗談を。その強さで国家に所属していないなど百害あって一利なしというものでしょう」


こちらの強さを認識しているもののまだ自分が負けるわけないと思っているらしいな。



「さすがに戦えばわかるかと思ったが、お前には失望したぞ」

「ほう? この私に向かってそのような口をきいてくるとは……。何様のつもりですか?」

「たかだか百余年で俺を忘れるとはな」

「なんですと?」



「俺は覚えていたぞ。なぁランドール」

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