13話

「ふむ、お主が《数学者》を持つという者か」

「そうよ! で、あんたは誰なの!?」

「ほう、この状況でまだそのような虚勢が張れるか。強気なことだ。しかし、口には気を付けたほうが良い。わしの部下にはかなり血の気の多い者が多くてな……」


ガツンッ!!

将校の一人がキィラの頭を床に打ち付ける。


「そういう目にあうことになる」



「ふむ、気丈なことだ。まだそのような目ができるか」


キィラは声を出さないように歯を食いしばりながら、覇権をふるうを睨みつける。


「この年頃はお主の管轄じゃったかの、ガヌルよ」

「は、お任せください。こちらの言うことをしっかりと聞くように調教してみせましょう。グフフ」


その口ぶりにさすがのキィラも顔を引きつらせる。


「よし、ではこの小娘はガヌルの部屋へ連れていけ。《数学者》を有効活用できればこの国はさらに発展することであろう」

「その通りでございます。《数学者》は大成すればこの国の全てを見通せるレベルとなるそうですからな」



「駄目だ。逃げられない……」


キィラはガヌルの部屋に連れていかれてから、本人が登場するまでに脱出を試みるが、《数学者》の演算力もこういった場合では役に立たない。

力は小さな女の子のものであり、鎖で拘束されていてはなにもできない。


「(みんなどうしてるかな……)」


自分が捕まってしまった後の村の様子がわからないので、自分がいなくなった後の様子が気になってしまう。

ユウトがよくわからない女の子を連れてきてからおかしな動きをしていたので、夜に出て行ったのにつけていったら見失ってしまい、その後王国の誰かに捕まってしまった。

暗闇で相手の姿は見えなかったけど、自分の身の安全に《数学者》のリソースを最大限用いているのに予測できなかったことから


「(ユウトは落ち着いてそうに見えて、実は激情型だからね…。私がいなくなって心配してないといいけど…)」





キィラが自分の行く末を案じながら村のことに思いを馳せている頃。

村ではユウトたちの出撃準備が完了していた。


「さて、お前たちに集まってもらったのは他でもない、俺の大切な幼馴染を取り戻すためだ」


ランドールが集めた魔族の前で俺は演説を行う。

ランドールが集めたのは自分よりも力の弱い者たちなので、ランドールがそうしろと言えばこちらの存在に疑念を抱いていても従ってくれる。

まぁ、そもそもランドールより強い魔族などそうはいないのだが。


「奴らには俺を怒らせるとどうなるかということを学んでもらわねばならん。お前たちは本気で戦うことをこの頃できていないと聞いた。心配するな。俺が許可する。存分に暴れろ。首謀者は消し炭も残すな。共犯の者も同様だ。お前たちの恐ろしさをわからせてやれ」

「ウオォォーー!!」



元来、荒事が好きな魔族たちから歓声があがる。

もめ事は力で解決するもの。

そういう考え方をする種族なのだ。



「さて、やるか」


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