14話

キィラはどうにかして拘束から逃れようともがいていたが、結局逃れるのは難しそうであった。


「(せめてこれだけでも抜け出す力があれば……!)」


それだけでもできたならばキィラは守備兵の動きを計算して、必ずとは言えないまでも脱出可能と呼べる行動をとれていただろう。



「グフフ、まだまだ元気なようですねぇ」


下卑たニヤニヤとした顔を浮かべながらガヌルが部屋に戻ってきた。


「……なにをするつもり!?」

「おぉ、怖い怖い。なぁに、ちょっと私の言うことを聞きやすいように調教するだけですよ。心配はいりません。すぐに自分から求めるようになるのですから!」


徐々にヒートアップしていくガヌルの様子に、キィラは知識がないながらも本能的な危険を覚える。


「(みんな、ごめん……!)」




「何を謝る必要がある?」

「え?」


城の外からユウトの声が朗々と響く。


「な、何事です!?」

「ご報告申し上げます!!」


ガヌルが狼狽して扉を振り返ったタイミングで直属の兵が駆け込んでくる。

彼らにはきつく言いつけてあるので、ガヌルが調教しているうちはめったなことでは入ってこないのだが、そのようなことを考える暇もないようだ。



「どうした!?」

「は! どこの手とも知れぬ者どもから城が囲まれております!」

「……そのようなもの対地大砲で一掃すればよかろう! 何のためにあれを設置したと!?」


少し言いよどむ兵士。


「なんだ! なんとか言え!」

「は。それが……、我が城は上空から取り囲まれております」



「は?」

「ですから、上空から取り囲まれておるのです。一頭のドラゴンと、数人の魔族により……」

「ドラゴンだと? あれは神話級の魔物のはず……。一個人に操れるようなものではない……。更に魔族だと? 奴らは協定を忘れたのか……?」


思考が追い付かず、疑問しか浮かばないガヌル。



しかし、それはキィラも同様であった。


「(え? 今のってユウトの声だよね? なに? どういうこと?)」


彼女は気づいていない。ユウトに彼女が惹かれているのは彼女に予想がつかないことをやってのける意外性が一端なのだと。

そして、それはユウトがであることを示すということも。



「ユウト様、今のなんです?」


シルが俺の発言の意図がわからず、疑問を呈してくる。


「え? キィラを感知範囲に取り込んだから思念を繋いだらキィラが皆に謝っているようだったので、返答しただけだ」

「それ、放送しなくともできたんじゃありません?」


まぁ、それは、あれだ。


「咄嗟に出ちゃったんですよね……?」


そう、それ。



「まぁ、もうこっちの存在はばれたんだし、いいか」


俺は乗っているプリュムに声をかける。

乗っていると言っても背に立っているだけなのだが。


ープリュム。ブリザードブレスだ。いけるな?ー

ーもちろん、パパ! でもいいの? 私まだ手加減とかできないから、キィラさんにも迷惑かけちゃうかも……ー

ー全力だ。キィラは俺がどうにかするー

ーわかったよ! パパ!-



「さぁ、行くぞ、お前ら」


城を包囲している魔族たちにも声をかける。


「悔い改めろ」

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