10話
「キィラが……?」
あまりに突然のことでさすがの俺も一瞬事態が呑み込めない。
「どうしてそんなことに……」
「それがね、キィラの能力がお国に知られて、国のために役に立ってもらおうということになったらしいの! でも、私たちはあの子の能力をわざわざお国に報告なんてしてないし、この国のことですもの。きっとひどい目に合わされるわ!!」
そう言ってキィラのお母さんは泣き崩れる。
今までは突然のことで理解が追い付いていなかったが、俺に話したことで情報が整理され、現実味を帯びてしまったのだろう。
「しかし、なぜ……?」
キィラの母の言う通り、キィラの
よって、その能力は秘密とされてきたはずなのだ。
そこで、俺はこちらを伺う視線に気づく。
だっ!!
《身体強化》をかけ、一瞬でそいつの前に出る。
「お前だな」
村の子供の一人だ。
「な、なんの話?」
「お前がキィラの能力を村の外の人間に話したんだ。違うか?」
《勇者》と《魔王》の《威圧》を駆使して脅す。
「ひっ。そ、そうだよ。こんなことになるだなんて思わなかったんだ」
震えながら村長の息子であるそいつは話す。
人間、恐怖が一定ラインを超えると逆に冷静になるものだからな。
ちゃんと話せている。
「覚悟しとけよ」
少し、圧を弱めて理解が可能なレベルの恐怖を伝える。
泣き出したこいつは放っておいていい。
「キィラのお母さん。村長とみんなを集めてくれ」
「なにをする気?」
息も絶え絶えに聞いてくる。
「ちょっとした説明だよ」
村長の家に村の責任者のみんなを集めてもらった。
「なんだこの忙しい時に。こっちはキィラのことでやらなきゃいけないことがいっぱいあるんだよ!」
衛兵の役職をもつおっさんが強めの口調で聞いてくる。
「具体的には?」
「え?」
「あんたごときになにができるのかって聞いてるんだ」
「ぐっ……。おまえに言われる筋合いはない……」
「いや、ある」
「ほぅ、なぜだ。お前に何ができると?」
愚問だ。
「キィラを助ける」
「無茶だ!」
「子供にそんなことが出来るわけがない!!」
「あんたらはそう言うだろうな。そこでだ。少し外に出てくれ」
いつもと豹変した俺の様子に口遣いも荒くなっているが、突っ込んでくるものはいない。
「プリュム、元の姿に」
「わかった」
プリュムが姿をドラゴンへと変える。
「な……!?」
全員開いた口がふさがらない様子。
「俺の能力は《無限創造》。自分が想像したものを創り出すことができる。プリュムは俺がドラゴンをイメージして創った」
一応の説明はしたが、聞いてるかは微妙だな。
「い、いかに桁外れな能力を持っていたとしても、一人でキィラを救うことなど……」
「あぁ、一人じゃない」
「なんですかユウト様。こんなとこに呼び出して……」
「悪いな、シル。手を借りたい」
「どうせ拒否権はないんですけどね……」
よくわかってるじゃないか。
「あれは……、原初の《魔法使い》シルエラ様……?」
ん?
なんだその称号。
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