9話

ランドールが今の世の報告をしてくる。


「ユウト様が我々の権利を広めて下さったおかげで、我々は無意味に人間に虐げられることなく、大きな戦いは起きなくなりました」


ほう。

俺も役立つことやってたんだな。


「その後、我々はその多大な影響力を活かして、人間には不可能な事業の手伝いなどをするようになりました。まぁ、我々にとってはただの暇つぶしに過ぎないですが、かなり感謝もされていましたね」

「私たちの時代からすると信じられないですね……」


シルが呟く。



「しかし、長年にわたるしこりはそう簡単にはとれず、反発し、我々に返り討ちにされるような勢力もおりました」


まぁ、当然だな。減っただけもうけもんだ。


「そんななか、《聖騎士》〇〇〇が表れ、我々とそのような者どもの間を取り持ったのです」


へー。


「名前わかんないってことはそれも俺だわ」


スキルにも《聖騎士》あるし。


「なんと!」

「ほんとになんでもやってますね……」

「? パパ、すごい!」


いや、わかってないのに同調しなくていいから、プリュム。



「しかし、折り合いはなかなかつかず、結局我々が表立って行動することはないようにするということになりました。我々は元々そんなに活動することを好みませんので、それで同意しました」


ふむ。

妥協点がそこか。


「その提案に不満のある魔族はかの《聖騎士》と戦うことで発散しろと他ならぬ聖騎士本人が言いまして、何人かは何度も挑んでいたようでした」


俺は前世のことを隠して相手していたのか。


「数回挑むと、ぱったり挑まなくなってはいましたが……」


あ、そこで暴露したんだろーな。



「そして、反対する輩がいなくなると、聖騎士は姿を消してしまいました。私や、人間の国王などには挨拶には来ましたが、各種族で重要な人物にしか言ってなかったのだと思われます」


へー。

なにしてたんだろ。


「その期間、俺がなにしてたかは記録に残ってないのか?」

「風の噂では自堕落な生活を送りながら、スキルの熟練に努めていたと……」


なんだその両極端な二つは。


しかし、道理で。

いくらなんでもほぼ全てのスキルが完成された状態なのはおかしいと思ってたんだよな。

たぶん《農夫》の時もそんな感じだったんだろ。



「そして我々は表立つことなく、こういう日陰者に雇われたり、魔界に帰ったりしていたのです。我々が動かないことによって人間は勢いを増し、かなり人口が増えました。我々には理解しがたいのですが、権力を持つ者の横暴も増えたと記憶しております。その対抗組織も増えたと」

「え? もしかしてこいつらもそういうのだった?」


ならすぐ《無限の死デス・マーチ》解かなきゃ。


「いえ、この者たちはただの盗賊……」

「ならいいや」


即座に切って捨てる。



「だいたい状況はわかった。ランドールは俺からの念話に注意しながら俺に協力してくれる魔族を探せ。昔の知り合いだけで構わん。とりあえず俺は普通に生活を送る」

「御意。しかし、魔族を集めよとは……?」

「権力が強い力を持ってるんだろ? 俺はともかく、周りに被害が及んだ時に対する備えだ。あって損はない」

「承知いたしました」



ランドールと別れて、村に戻る。

シルも俺が作った家に置いてきた。


「あぁ、ユウト! 良かった……。もう私どうしたらいいか……」


キィラの母親が泣き崩れる。


「え? どうしたんですか?」




「それが、キィラが王都に連れていかれたの!」

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