16話
「とりあえず、王様は残しておけ。それ以外はどうなっても構わない」
「御意に」
後ろの王様はふんぞり返ってるだけだし、先ほど俺が真横に現れたというのに今全く警戒心を持っていないという役立たずっぷり。
「さあ、ユウト様の命により、あなた方を血祭りにあげましょう。どなたから来られますかな?」
ランドールが戦闘を始めようとする時、他の場所では既に戦闘が始まっていた。
「ははっはぁ!!」
久々に暴れられるという興奮で笑顔になる。
ランドールに命令してる奴が何者なのかはわからないが、ランドールが従っている時点で自分には選択する余地もない。
昔自分はランドールに敗れているのだから。
「まぁ、今ならもうちっとはいい勝負できるかもしれねーけどなー」
それでも勝てるとは思わない。
「止まれ! ここから先は政務大臣様のお部屋だ! お前たち侵入者には立ち入らせることは出来ん! 我ら私設兵と一戦交えて貰おうか!」
「おお。いいねぇ!」
ユウトとか言うやつに示された方に進んでいたら敵と出くわした。
こりゃほんとの実力者だな。
ユウトに対する評価を大幅に上げながらその悪魔は邪気のない笑顔で浮かべる。
「我ら私設兵と戦うにあたり、名を名乗ることを許す! 名乗れ!」
「あ? あぁ、そうだな。名乗るのが礼儀ってもんか。こりゃ失礼を」
一応は会話を続けるが、その顔は先ほどと違い、笑顔ではない。
悪魔というものはプライドの高い生き物だ。
「上級悪魔のマンハイムっつうもんだ。一つよろしく頼むぜ!」
その一言と共にマンハイムが飛び出す。
その手にはいつの間にか短刀が握られている。
「は! そのような武器で我らに届くわけがないだろう!」
私設兵は槍を扱っており、本来短剣が届く間合いに到達する前にやられるだろう。
「な、なんだこいつ!」
「槍が通らない、ぐあっ!」
「ははっ! これだよ、これ!」
槍による刺突をものともしないマンハイムは相手の懐に潜り込んでは首筋を切りつけて確実に命を奪っていく。
「な、なぜ刃が通らない!?」
「そんなこと教えてやる義理はねぇだろう?」
「ぐっ!」
無慈悲にもマンハイムによって私設兵はその数を減らしていく。
「なにをしている! 槍で薙げ! 懐に入れさせるな!」
「お、おう!」
「おっと」
バックステップしてマンハイムは槍を避ける。
「ちっとは頭の働くやつがいるみたいだな」
一人がマンハイムに対策を講じるまでに私設兵はその数を半分にまで減らしていた。
「やつの武器は短刀だけだ。近づけなければどうということはない! 気をつけろよ! 上級魔族はそれぞれが特殊な能力を持っている! あいつは恐らく防御寄りの能力だろう! 簡単には倒せないぞ!」
「ちっ、知ってる奴がいたか」
マンハイムのスキルは《
文字通り自分への攻撃をある程度遮断するものだ。
イメージ的には自分の周りに膜が張っているのに近い。
ダメージはなくともその衝撃までは消せないので迂闊に飛び込めないのだ。
「まぁ、こっからが面白いとこだよなぁ!」
もちろん魔族なのである程度は魔法も使えるのだが、白兵戦を好むマンハイムの思考からその選択肢はすでに消えていた。
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