少年少女はこれを読め! これが「大人になる」ということだ!

第二章読了時のレビューです。
読み終えた直後の感想、
「これは埋もれてしまってはいけない作品だ。ぜひ書籍化して世に広めてほしい」

ストーリーとしては、本作のヒロインであるざくろを救うために、
主人公である剣一が同世代よりも少し早く社会に出て働こうとすると、
突如取り憑かれた冥王に決意の浄化という使命まで背負わされるという、かなりハードモードな展開。

そんな人生を歩んでいることもあり、剣一は年齢に見合わない、かなり精神的に大人な人物で、
作中で語られる人間観は綺麗事抜きの真理を突き、とても説得力を持つもので、
登場する同世代の人物たちを通して「お前たちは甘やかされ過ぎている。如何に自分が生ぬるい環境に生きているか自覚しろ」と説かれているような気分でした。

また、時々挿入される日常のシーンで、婚約者のざくろや剣一の母親とのやりとりを読んで、
剣一が年齢に見合わない大きな宿命を背負っていることを再認識するとともに、剣一に一家のために働く「父親」の姿を見た私は、
「これが大人になるということだよなあ」としみじみ感じました。

また、物語全体の構成も見事です。
最初は剣一が婚約者である、ざくろと幸せになれない運命に抗う作品かと思っていましたが、
第一章を読み終えた時、そうじゃないことに気づき、
それなら剣一は何のために働き、使命を果たそうとするのか?
その疑問は第二章で明かされ、とても納得できるものでした。
あるんですよね。自分にとって損にしかならないのに、それをするに値する理由が、
これは読んでぜひ自分の目で確かめていただきたいと思います。

内容はどちらかというと大人向けで、十代や二十代前半の若者には作中の心情を理解するのは難しいかもしれません。
しかし、この作品を読み込み、向き合ってしっかり理解できるようになった時、
あなたは読む前よりも確実に、一つも二つも精神的に大人になれることでしょう。
絶対の自信を持っておすすめします!

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