高校生が700万円払って嫁を得る。
これだけでも何事!?と驚くような、ぶっ飛んだラブコメかと思うような設定ですが、本作はいわゆるラブコメの枠には収まりません。
冥王と契約し、「闇の決意」を保持し続けるために己が武器を手に能力バトルを繰り広げます。が、いわゆる異能バトルの枠には収まりません。
ここにあるのは、三人の少年少女の、あまりに深く、熱く、悲しく、かけがえのない、心揺さぶられる魂の叫び。
人を思う愛、自分自身と戦う葛藤。
ここまで見事に描き出された作品を、初めて読んだかもしれません。なぜ書籍化してないの?
時に心臓を抉られるような、痛みを伴う三人の慟哭から、目を離すことができません。
とてもレベルが高い、素晴らしい作品です!
タイトルの通りだあ! この作品に出てくる人たちのほぼ全員(ここ重要。そう思えない面々もいるにはいるので)に俺はそう思ったんだ! 何でかっていうと登場人物の大体が(ここも重要、そうじゃない奴もいるから)不幸なんだよ! 辛いんだよ! 苦しいんだよ! 悪いことをした奴がそうなるってんなら納得できるだろうが、善人や一般人がすごい苦労してんだよ! だったら、思うだろ!?
「幸せになってほしい」ってな!
その中でも特に幸福になって欲しいのはヒロイン(俺はそう思っている!)の茜だ! この人は何が何でも幸せになってもらわねえといけねえ! いい女で、健気で、元気で、行動的で! 他にも色々あるが、さすがにネタバレになるんでこの辺で! とにかく読み終えた人は俺に言うだろう、
「なるほど、気持ちはわかるわ」ってな!
主人公は十六歳の男子高校生。
彼の近所には、母親から虐待を受けている十四歳の少女が住んでいます。長年の虐待により、彼女は洗脳にも等しい束縛を母親から受けています。児童相談所もその他の公共機関も当てになりません。ゆえに主人公は、700万円の結納金を彼女の母親に支払うことを条件として彼女と結婚することを決意します。
しかし主人公は苦悩します――自分は700万円でヒロインを買っただけなのではないか――それは人身売買と何も変わりはないのではないかと。ましてやヒロインは、長年の虐待によって他人に従順な性格となってしまっています。つまり、ヒロインを娶ったあとは、自分が母親の代わりに彼女を束縛してしまうのではないか――そのような悩みもまた抱えています。
それどころか、主人公には思いを寄せる女性が別にいるのです。
そのような事情があるために、主人公はヒロインと幸せになる気はありません。結婚してヒロインを母親の呪縛から解放し、自立した人格のある普通の少女として育て上げたあとは、彼女が自分と離婚するのを待とうと考えています。
言うまでもなく、この正義感は非常に独りよがりです。そんな歪んだ決意の元に現れたのは、「闇の決意」を持つ者に異能力を与える存在・ハデスでした。
この物語は、男子高校生が二人の少女から思いを寄せられるハーレム展開であると言えるかもしれません。しかし、主人公は上記のとおり、ヒロインのうち一人を愛してはいけないという歪んだ決意を抱えています。この決意のイビツさが、分かり合えているようで分かり合えていない、微妙な関係を登場人物たちのあいだに作り出しています。
過酷な状況に置かれた人々の心情と、そんな中で展開される熱いバトル。やがて主人公の歪んだ決意は、胸が締まるような意外な展開とともに、二人のヒロインのあいだにまでヒズミを生み出します。
幸せになれない主人公とヒロインとの関係――その青春の終わりへと向かってゆくような物語でした。
タイトルも中二的で、描かれる異能(決意)も中二心をくすぐるものばかりです。
ですが、この作品が描いているのは純愛だと思います。
主人公の黒田剣一は、近所にすむ早乙女ざくろを救うため彼女にプロポーズします。
非合法な仕事をしているのも、彼女の母親の要求する結納金を稼ぐため。
彼は、自分がざくろをいいようにしてしまったら、彼女の母親と同じになると考え、結納金支払い後は彼女を自分からも自由にすることを考えている。
同時に彼にはもうひとり大事に思っている人物、同級生茜がいます。
彼女は剣一に心寄せてくれますし、剣一としても一緒にいて心安らぐ存在ですが、ざくろのこともあり、彼女の気持ちには応えてあげられない。
三人の運命はどう転ぶのか。
目が離せません。
14歳の少女にプロポーズするという、衝撃的なシーンで幕を開ける本作。
婚約者・ざくろを母親の虐待から救う決意をした主人公・剣一は、そのことが原因で冥王ハデスに取り憑かれてしまいます。
ハデスの目的は、ネガティブな感情に起因する人間の決意を挫くこと。
どうしてもざくろを救いたい剣一の、心身を掛けた戦いの日々が始まります。
見どころは、ハデスから異能を付与された者同士の「決意」を掛けたバトルシーンです。
迫力あるアクション描写に重ねて叩き付けられる、怒涛の如き心情描写。
ここに、人間の心理の内部まで深く抉り込む、作者さまの持ち味が素晴らしく発揮されています。
なぜ剣一はハデスに取り憑かれたのか。
それがこの物語のテーマを紐解くための重要なポイントとなっています。
キーパーソンは、剣一のクラスメイトであり、友人以上恋人未満の関係にあった茜。
茜の存在が、剣一の中に歪な決意を生じさせてしまった大きな要因の一つとなっているのです。
「誰かを救いたい」という決意は、一見すると美しく崇高なものに思えます。
だけどその実、自分自身を雁字搦めに縛るものでもあるかもしれません。
重たい覚悟を背負った少年は、決して綺麗事ばかりでは済まない苛酷な運命に翻弄されます。
和やかな日常の中に同居する、今にも心を握り潰されそうな焦燥と揺らぎ。読むほどに嵌まり込んでいくこと間違いなし!
一風変わった人間ドラマをお求めの方におすすめしたい作品です。
第二章読了時のレビューです。
読み終えた直後の感想、
「これは埋もれてしまってはいけない作品だ。ぜひ書籍化して世に広めてほしい」
ストーリーとしては、本作のヒロインであるざくろを救うために、
主人公である剣一が同世代よりも少し早く社会に出て働こうとすると、
突如取り憑かれた冥王に決意の浄化という使命まで背負わされるという、かなりハードモードな展開。
そんな人生を歩んでいることもあり、剣一は年齢に見合わない、かなり精神的に大人な人物で、
作中で語られる人間観は綺麗事抜きの真理を突き、とても説得力を持つもので、
登場する同世代の人物たちを通して「お前たちは甘やかされ過ぎている。如何に自分が生ぬるい環境に生きているか自覚しろ」と説かれているような気分でした。
また、時々挿入される日常のシーンで、婚約者のざくろや剣一の母親とのやりとりを読んで、
剣一が年齢に見合わない大きな宿命を背負っていることを再認識するとともに、剣一に一家のために働く「父親」の姿を見た私は、
「これが大人になるということだよなあ」としみじみ感じました。
また、物語全体の構成も見事です。
最初は剣一が婚約者である、ざくろと幸せになれない運命に抗う作品かと思っていましたが、
第一章を読み終えた時、そうじゃないことに気づき、
それなら剣一は何のために働き、使命を果たそうとするのか?
その疑問は第二章で明かされ、とても納得できるものでした。
あるんですよね。自分にとって損にしかならないのに、それをするに値する理由が、
これは読んでぜひ自分の目で確かめていただきたいと思います。
内容はどちらかというと大人向けで、十代や二十代前半の若者には作中の心情を理解するのは難しいかもしれません。
しかし、この作品を読み込み、向き合ってしっかり理解できるようになった時、
あなたは読む前よりも確実に、一つも二つも精神的に大人になれることでしょう。
絶対の自信を持っておすすめします!
主人公はざくろという虐待を受けていた少女と婚約した。しかしそれと同時に膨大な「借金」を背負うことになる。しかもその「借金」が原因で、ハデスに憑かれてしまう。
ここから主人公の高校生活と闇仕事、そして家庭と実家という四重生活が始まった。この作品の魅力の一つは、何と言っても主人公の周りのキャラクターが濃いことだ。ハデスと主人公。実母。委員長なのにゲーム仲間の茜。闇仕事の仲間。そして、主人公と同じように、能力を持った様々な能力者たち。主人公に尽くすざくろ。主人公を取り巻く人々が、この物語を回していく。
主人公はざくろのために、仕事と高校生活を両立していたはずだった。しかし委員長で美少女の茜に惹かれている自分に気付く。そして茜も、主人公のことが好きだった。この問題から逃げてきた主人公に、それぞれの想いを知らしめたのは、ある女性能力者だった。この女性能力者は、主人公と停戦協定を結んでいたはずだった。
果たして、この女性能力者の能力と、その正体は?
主人公が本当に好きなのは?
想いと戦術が今、交差する。
現代ドラマ的ファンタジー。
是非、ご一読ください。