第26話 彼の温もり・彼女の憂鬱

この掌にシャボンを載せて

彼の気持ちに届くかどうか、


確かめようにも どうにも気鬱で


微笑んでみようにも


バッグの中の

ナイフが重くて どうにも苦痛で


そんな私の心の中を

知ってか知らずか


彼は笑顔で

優しく

手を上げ近づいてくる


まるで世界の終りのように

その微笑みが

心の奥に

痛くて辛くて


引き攣る瞳の奥は漆黒


しあわせがすぐ傍に

あの日はあったはずなのに


どこに出掛けてしまったの?


まるでひょいとドライブ

散歩に出たあなた


二度と帰らぬ あの日のあなたは


だからちょっとだけ

今夜は泣かせて眠らせて



明日はまた何もないよに笑えるように

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