第10話 小さな幸せ
ただ、ご飯を食べて寝るだけの楽しみも何もない、寂しさや悲しさしかないような気だるい生活…。もう日常化しつつある。
でも2ヶ月に1度くらいだけど、ほんの短い時間だけど、私には小さな幸せが訪れる。
K君が私のご飯やらおやつを差し入れに来てくれるんた♪
私は知らなかったけど、Hちゃんとは一応連絡は取っていて、私の体調とかご飯やおやつはまだあるのかとか、逐一私の事を気にかけてくれてたんだそうだ。
『ナナ、今からK君来てくれるって!』それを聞くと私はもう言葉が理解出来ているかのようにソワソワと落ち着かない。
ピンポンが鳴るとDASHで玄関へ行く。
K君が現れると、私は嬉しすぎて玄関で毎回嬉ションまでしてしまう始末だ♪
ただ、K君はお家には入らない。玄関で座って私を撫でながらおやつをくれる。
5分もすれば、Hちゃんに私の食料を渡してバイバイだ…。
私は一緒に行きたくて玄関から出ようとするが、K君がダメだと言う…。玄関でいつもキャンキャン泣いて抗議していた。
K君の帰る車の音が聞こえなくなるまで、私はもしかしたらまた戻ってきてはくれないかと、部屋の端から端までを何回もDASHして往復していた。
帰ってしまうのは寂しいけれど、K君に会える事と、撫で撫でと、遊んでおやつを貰えたりする事が、私には幸せだった。
辛うじて生きる上での不自由だけはないが、他に何もない無気力な生活の中で、K君の差し入れの来訪だけが、ささやかだが私には唯一の幸せになっていた。
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