第5話 新生活
私とHちゃんとオッサンの新しい生活が始まった。
オッサン(以後K君と呼ぶ)は、実は幼い頃に犬に噛み付かれた事があり、そのトラウマから、犬は苦手なのだそうだ。
しかし、私がまだ仔犬だからか、見た目が小柄で全然怖くないからなのか、私には積極的に絡んでくれる。
K君は、病気だ。命に関わるような病気ではないし、見た目には普通なのだが、その病気の為にお仕事に行けない。遠くに出掛けたり旅行にも行けない。でもお家に引きこもってばかりでは病気が悪くなるばかりだからと、なるべく外出はするようにしている。
K君がお仕事に行けないのがわかっているから、このお家ではHちゃんがお仕事に行く。
お家の事をK君がやる。そういう役割分担をお互いにわかってて同棲している。
Hちゃんは、朝起きて私にご飯とお水を用意したら、自分も身支度を整えて、『行ってくるね♪』と出勤して行く。
私はK君に見守られながらご飯を食べて、それから少しの間、お布団でゴロゴロしながら一緒に遊ぶ。
しばらくしたら、K君はお布団をたたみ、洗濯機を回しだす。そして掃除機でお部屋を掃除する。私は掃除機から逃げながらもK君を追い掛けて遊んでいる。
洗濯機が止まると、窓から洗濯物を干して、それからK君もお出かけ。引きこもらないようにする為だけのお出かけなので、このお家は長時間留守にはならない。私がお留守番するのはその短い時間だけだ。
K君が帰ってくると、また私と遊んでくれて、私が遊び疲れてくると二人で添い寝したりもした。
一緒にTVを見たり遊んだりしながら、Hちゃんの帰りを待つ。
帰宅したら、みんなでご飯にしようとなって、ワイワイ賑やかに話したり遊んだり、楽しい時間は続く。
『おやすみ♪』の声がかかるまで毎日がこんな感じだ。
私はすぐにこの生活に慣れ、ホームセンターに連れて来られた時の不安や恐怖は消し飛んでいた。
Hちゃんに飼い主になってもらえてよかった。この頃の私はいつもそう思っていた。
毎日が楽しくて、何も心配がなくて、それは当たり前ではないかもしれないのに、これが普通なのだと思えるようになっていた。
これからこんな日々がずっと続いていくのだと勝手に思い込んでいたんだ。
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