チワワの私が欲しかった○○

k.k_n.n

第1話 犬として生まれ~

私は犬。

犬種はチワワ。小さい雌犬だ。

チワワには毛が伸びるロングコートと伸びないスムースコートの二種類がいるが、私は前者。白と黒の混ざったブラックタンと呼ばれる毛色をしている。

岡山県のブリーダーさんで生をうけた。

何頭か兄弟はいると思うが覚えていない。

まぁ当然だ、物心つく前には母犬から引き離され、私は売り物として他の土地へと旅立つ運命だもの。(当時はそれすらわかりようがないけれど)

幸いと言えばいいのかわからないが、同じ目的地へ向かう兄弟もいた。向こうは雄犬だったけど、唯一知ってる存在。

訳も分からず車に乗せられ、その子と身を寄せ合って不安を少しでも紛らわせるしか方法はない。

車に揺られ、私達がたどり着いた場所は隣の兵庫県、とあるホームセンターだった。

これからここで生活し、私達の買い手が見つかるまで、プライバシーも隠れる所も何もない、透明なショーケースに閉じ込められて、客の見世物にされる。もしも買い手がつかなければ、かなりの長い期間閉じ込められたままの生活になるわけだ…。

私達は、いや、もう引き離されてしまってるから、兄弟の心配まで頭は回らない。

私はこれからどうなってしまうのだろうか…とにかく不安で不安で仕方がなかったのをよく覚えている。

着いたその日は、ショーケースの準備もあって、私は地面に置かれたタオルを敷き詰めたダンボールの中で一夜を過ごした。

ゲージの犬達が鳴いたり叫んだりしている声も聞こえる。私は不安と怖さから、ダンボールのすみっこで小さい身体をさらに小さく丸めていた。嬉しい、楽しい、そんな感情は微塵も沸いてこない、沸くはずがない。

私にすればこれから先には絶望しかないようにすら思える。

そんな事を考えているうちに、まだ仔犬の私は、さすがに疲れから、小さく丸めた体勢のままダンボールの中で眠りに落ちた。


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