第9話 生活の質
K君が出ていってしまった。
帰ってこない…。私はいつの間にか玄関でK君の帰りを待つ癖がついていた。
そんな日はやって来ないのに…。
何よりも、K君が出ていった日の夕方から、早くも私の生活には変化が始まる。
私はいつもK君にだいたい決まった時間にご飯を入れてもらってたから、Hちゃんのタイミングが合わないし、わからない。
ご飯の時には必ずお水も入れ換えてくれていたけど、それもない。綺麗に完食しても、何一つ感想すらない。K君は必ず『お利口さん♪』と言って褒めてくれてたし、食後の歯磨きスティックも欠かさずくれていた。
私の好きなお散歩も無くなった。1~2回は行ったかもしれないが、ほとんど毎日行ってたわけだから、無くなったに等しい。
一人のお留守番時間も増えた…。時には真っ暗なお部屋で待たされるような日も。
朝に用意されたご飯が大量に山積みされ、そのまま夜遅くまでひとりぼっちの日々が当たり前のように増えていた。
これだけあれば朝晩の分は足りてるだろうということらしいが、こんな雑な管理は今まで無かった。
朝方に帰って来て、私のご飯だけ入れてまたすぐ出ていくみたいな日も。
まるで、私が居なければ帰って来ないで済むかのような…。
私は、ひとりぼっちで床に寝転んでるだけの時間ばかりだったように思う。
暇な日は相手をしてくれたけど、それは自分が暇だから…。そんな感じだった。
Hちゃんが誰か連れてきて、その人が遊んでくれたりしたこともあった。それはそれでありがたいし楽しかったけれど、その時その時が楽しいだけで、私のお世話をしてくれたりする事は無かった。むしろ、誰か連れてきたりするようになってからは、その人と出掛けると帰宅時間は前にも増してより遅くなっていった。
イタズラして凄い声で怒られたりもした。悪気はないのだけど、届く位置にあるんだもの、遊んでしまうよ。
私の暮らしの質は、K君が居た頃とは比べようもないくらい低下していた。
私の事を第一に考えて、心配してくれる人は誰も居なくなっていたんだ…。
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