第11話 激変
相も変わらず、気だるい日常が続いていたが、私にとっての最大の危機、私が一番恐れていた事がある日突然現実としてやってきてしまった。
Hちゃんはお家の家賃が払えなくなり、お家を追い出される事になったのだ。
K君が居た頃は、支払いはきちんとK君が日にちを管理してくれて、前もって忘れないようにしてくれていたが、それもなくなってて、ある時なんかは冬にいきなり電気が止まってて、Hちゃんの布団に二人で潜って暖を取った事もある。
でも今回のは致命的だ。払えない以上は追い出されてしまうのだから。私は勿論知らない話だが、2ヶ月以上滞納していたらしい。
そんなわけで、もうHちゃんも私もお家には居られなくなる…。もっと言えば、次にHちゃんが住むお家で私は生活させてもらえるのかどうかもわからないんだ。
案の定、Hちゃんは電話しまくっていた。
必死に私を引き取ってくれる里親を探していた。何を話してるかワンコにはわからないと思うかもしれないが、雰囲気は伝わる…。
私はとうとうお家も無くなり、見ず知らずの人の所へ送り出される事になるんだ。
私は震えていた…。怖くて怖くて震えていた。私は人見知りだから、誰一人知らないような所へ行くのは怖くて仕方がない。
更に言えば、優しい里親さんが見つかればまだいいかもしれない。少しずつ時間をかければ慣れていけるかもしれない。ただ、見つからない場合には、私は保健所へ収容されてしまうかもしれないんだ。
また私は先の見えない不安にぶち当たる事になった。
Hちゃんのプランは、どうにかして私と暮らせる方法を模索してはいない。
もう自分をどうにかするだけで精一杯で、私の心配なんかする余裕がないんだ。
…それはわかるけど、今までのツケが回ってきただけで、ある意味自業自得なのに、私にまで被害が及ぶのは納得いかない。
もう私の存在は、必要とされているわけではなく、完全なお荷物状態だった。
里親を探してくれてるのは、周りから酷い人間だと思われたくないから捨てる事が出来ない…まぁそれだけだ。
今までの生活で、私への愛情がすっかり失せているのはわかっていたけれど、こうなる前にもっと色々出来たはずなのだ…。
私は、私自身としては、Hちゃんに選ばれてHちゃんの家族になり、一緒に住んできただけなのに、この家賃の高いお家に住まないといけなかった理由はペットが居たからだ…と、まるで私のせいとばかりに周りに話すような有り様だったから、私もこの時点でHちゃんに対する恩や愛情がすっかり失せてしまっていた。
私は一体どうなるんだろう…あれこれ考えていてもやはり最後にはもうそれしか考えられなくなり、ブルブルと震えるばかりになっていた…。12月、確かに寒い時期だったけど、寒さからくる震えではなかった…。
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