第7話 小さな変化

楽しい毎日は続いていた。

少し変わった事と言えば、Hちゃんが体調を崩してしまって、お仕事を続けられなくなった事だ。

K君の病気と少し似てるのかもしれないが、お布団でずっと寝込んでしまったりはしてないけれど、Hちゃんはお仕事を辞めてお家に居るようになっていた。

私にはわからない事だから、私にとっては大好きな二人がいつもお家に居るわけで、何も不満はない。むしろ嬉しいわけだ。

ただ私には嬉しいはずのこの事態から、徐々に徐々にではあるが、関係性というか態度というか、そういうものに変化が生まれ始めていた。

でも私がその事に気づくのは、それからかなり後になってからだった。

お世話やお遊びは今までと変わらずK君がやってくれてたし、三人で出掛けたり出来るのも私には嬉しかったし、とにかく犬である私には嬉しい変化だと認識していたと思う。

私が???と思うようになったのは、Hちゃんがお仕事を辞めて1ヶ月くらいが過ぎてからだった。

Hちゃんはいつもお昼過ぎまで寝てるんだ。だから、私の朝ご飯はいつの間にかK君の担当になっていた。

それからK君は洗濯機を回し、私のトイレやらお水を交換し、いつも通りやってくれてから、『ナナ、行ってきます♪すぐ帰るからな』と行って外出していく。

でもまだHちゃんは爆睡したまま。私が『起きて遊んで♪』と吠えると、『うるさい、ナナちゃん静かにして!』と扉越しに怒られたりする。

???なんでかな、今までこんな事はなかったのに…。私が何か悪い事したのかな?

そんな事を考えてしまう。

そしてHちゃんは起きて支度をすると、『ナナ行ってくるね』と言って、私のいる部屋も覗かずに、扉越しに声だけを残して出掛けて行く。

なんかある日からそれが普通のように繰り返されていた。私は知らない事だったけど、Hちゃんが起きないから、K君が『洗濯済んでます。ナナのご飯とお水もあげました。トイレシートも交換してます』って毎日出掛ける前に手紙を置いててくれたらしい。

Hちゃんはそれを見て、私の用事は何もせずに出掛けていくようになったみたいだ。

それでも、『◯◯してもらったの?よかったね~』とか、最初の頃はきちんと顔を見て撫でながら話し掛けてくれていた。

それがいつの間にか、今日は顔を見たっけ?って日さえあるように感じるようになっていた。

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