【バベルの図書館文學賞】試論④~賞金

 賞金は必要ない。

 曩時、二十年のアマチュア作家生活を閲して新人賞を受賞した小説家が、二〇〇〇万円の賞金を掌握した爾時、「わたしは二〇年間、一円ももらわずに書きつづけてきたんですよ、二〇〇〇万はやすすぎる」というように発言していたのを記憶している。少々、論点はずれたが、だいたいにして、アマチュア作家の冀求するところのひとつは、賞金ではなく、プロの作家として、文壇レースのスタートラインに聳立できることではないか。愚生の愚考する【バベルの図書館文學賞】では、「応募者全員の作品の質が黄塵のちまたにとわれる」という構想をくみたてている。畢竟、「応募者全員がプロになれる」賞を考覈しているのである。幾百万円の賞金を受賞者ひとりに享受せしめるくらいならば、その命金ですこしでも賞そのものの質をたかめるべきではないか。余談だが、プロデビュー嚮後の視座として、基本的に、受賞後第一作まで単行本化を約束している文藝賞やハヤカワSFコンテストは素晴らしい。新人賞受賞者の原稿でうめつくされ、腐敗臭がするといわれた雑誌『群像』も、同様の意味ですぐれている。と雖も、【バベルの図書館文學賞】はさらに過激にゆきたい。詳細は後述する。

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