【バベルの図書館文學賞】試論⑥~最終段階

 最後に、【バベルの図書館賞】の全貌である。

 前述のとおり、【バベルの図書館賞】では、応募者すべてをプロにする予定である。応募全作品を、一冊の電子書籍として網羅し、販売するのだ。基本的に、下読みによる選考、中間選考、最終選考を閲して「大賞」受賞作は決定されるが、法律に抵触でもしないかぎり、全応募作を「バベルの図書館賞受賞作」とする。応募作三〇〇〇篇として、専門電子書籍サイトで三〇〇〇円、仮令、印税百%としても、ひとり一円しか享受されない。ゆゑに、一次選考か二次選考通過作已上の作品にたいして、通過段階によって、印税率を変動させて支払うなどする。一次落選者にはもうしわけないが、募集要項にて、無料で応募作を公開することに諒承してもらう。前述の評価シートも、この巨大電子書籍に添付すれば、選考側も無責任なことは書けなくなるだろう。少々残酷かもしれないが、一次落選者もふくめて、応募者全員が、本作をダウンロードしなければ、中間発表や評価シートという選考経過が確認できないとなれば、それなりの売上が約束されるだろう。畢竟、応募者全員の命金により、予選通過者から大賞受賞者までの印税が支払われるわけだ。僥倖にも、一般読者も購入してくださるほどの賞になれば、応募者の意慾も高騰するだろう。毎年、千状万態の応募原稿が網羅された『物語の大伽藍』が上梓されてゆく。これこそ、まさに【バベルの図書館】文學賞と命名するゆえんである。此処において、「冀望者全員即刻プロ」となり、「ボルヘスの想像したような図書館が現実化する」という賞が完成する。

 これが愚考する【バベルの図書館賞】の試論である。

 あまりにも破家破家しいだろう。

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