【バベルの図書館文學賞】試論①~理想の文學賞をもとめて

 毎年幾千から幾万もの「新人賞応募作」が鏖殺されている。

 それぞれに寿命や定命をけずり、輾転反側しながら執筆した作品群が、一文字も人口に膾炙されないまま、闇から闇へと葬られている。愚生は、プロ・アマとわずに愛読する雑食読者なのでわかるが、ネット上で無料公開されている落選作のなかには、「これって、もうノーベル文學賞ものでしょう」「ああ、これはクロード・シモンとル・クレジオを攪拌させた世界文學レベルの作品なんだな」「これが一次通過しないのならば、ガルシア=マルケスだって一次落ちだろう」などとおもわれる傑作がごまんと存在している。そのうちのひとり、山本浩貴氏の無料作品を劉覧した爾時には喫驚したが、山本氏は僥倖なのか不幸なのか、最近、文藝誌でデビューしたらしい。閑話休題。曩時、雑誌『群像』の対談企画にて、某作家(というのも御名前を失念してしまった)が、「群像とかに掲載されるものだけじゃなくて、ひとりにも讀まれずに消えていった小説たちが、日本文學史ってものを構築しているんだよね」というようなことを仰有っていた。出版エージェント制度をとっている欧米の実情はわからないが、すくなくとも、日本文學における現状の一因は、あきらかに「新人賞のありかた」にある。愚生は此処に、浅学非才なる愚生自身で考覈する、「理想の文學賞」を想定し、【バベルの図書館文學賞】と命名したいと存じあげる。なにゆゑにボルヘス「バベルの図書館」の名前を冠するのかという理由は後述する。無論、実現不可能な着想であることは承知しているが、一アマチュア作家の妄想した文學賞ということで、読者諸賢にも想像力をはたらかせてたのしんでいただけたらと存じあげる。


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