学園ミステリーと青春小説と文学のポップな融合!

読み終わって思うのは「とにかく面白かった!」という素朴な感動。
そしていい物語に出会ったな、というしみじみとした読後感です。

主人公は月ノ下君という、ちょっと冴えない感じの、ちょっとドライな感じの高校生。
ヒロインは可愛いのに、小説家志望のちょっと理屈屋で、ちょっとこじれた感じの女の子。

この二人が学校で起こる、ささやかなミステリーに巻き込まれていく、そんなお話です。
物語そのものは中編の連続体で、それぞれに魅力的なキャラクターが登場し、一風変わった事件が語られていきます。
そしてこの二人がまるで科学反応のように、意外な形の真相を突き止め、彼らなりの一風かわった解決策を講じていきます。

まず特筆すべきはこの物語の持つ雰囲気です。
日常で起こりながらも、事件のもつ特異さ、そして意外な真相というミステリーの雰囲気が素晴らしいです。
さらには主人公とヒロインはもちろん、事件の渦中で次々登場する少女たちのなんとも魅力的なこと。
そして新たな少女たちが登場するたびに、接近したり離れたりする二人の距離感への悶絶具合がまたなんともクセになります。
そう、これはミステリー集であるばかりでなく、二人の青春小説にもなっているのです。

そういったちょっと複雑な構成でありながらも、とにかくリズムよく軽やかに物語が進んでいきます。
まぁ簡単にいうと、とにかく読むのが楽しいのです。
こういうのは物語にとって一番大事なことではないかと思います。

さらに何よりのミステリーはこの物語に潜むテーマ性にあります。
そこにはなかなか答えの出ないような、でも大事な問いの数々が、寓話の形で潜んでいます。
そんなところもじっくりと考えることが出来て、そして二人がどんな答えを出すのかが楽しみで、それがこの物語を読ませる原動力になっているのです。

こういう作品はなかなか珍しいと思います。
それだけにとにかく沢山の人に楽しんで欲しいと思います。

いろいろ書きましたが、とにかく面白いから是非よんでみてください!

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