第22話 つい、出来心で…
「…で、結果がこの凍ったフォレストウルフって事ね?」
「えっと…はい、」
「まあそうなるな。」
INギルド。レーナさんの尋問みたいなのを受けてるなう。
あの相談のあと、ちょっとテンション上がった私とエアは魔法に属性を付けて放った。
森の中だから火はダメだし、土でどう倒すかわかんないし風は素材がズタズタ…とかで消去法で残ったのが水だった。
でもそのまま放つと周り大洪水じゃん?
だから凍らせれば良くね?ってことでやってみたのよ…そしたらね、うまく行き過ぎた!
今私たちの目の前にあるのだが、フォレストウルフが完全に凍ってしまったのだ。いわゆる氷漬け状態だね。
しかも氷が溶けない!普通は溶けるらしい。
んで、その凍ったフォレストウルフをヨシュアさんのマジックバックに入れて、ギルドへ
戻ってきて報告中なんですよ。
「森の浅いところにこいつが居たのもだけれど、フィアちゃんにこんなに魔法の才がある事に私は驚きを隠せないわ…」
(これ良くあるやつやーん、ここで実力判明して目立つ奴だー)
「おう、ちなみにブレスも完璧に防いだぜ?」
おいいいい!?余計な事をぉぉお!?
増やすな!これ以上増やすな!
「そんなことまで…」
あああぁ、そんな顔で見ないでぇー!
“この娘、天才なんじゃないかしら?”みたいな目でこっちを見ないでぇー!
威力はきっと杖のせいだからァァ!!
『いやぁー、やり過ぎたですね〜!』
ですねぇ!?とっても!!!
エアさんはやけに呑気ですねぇ?!
「取り敢えず、この氷を溶かして素材を捌いちゃいましょう。」
わーい、置いといてくれたー!
そのまま忘れてスルーしてくれれば私は泣いて喜ぶよー?
「フィアちゃんは後でお話がありますからね」
ダメぽ…。忘れてくれなさそう。
今なら私アレがよく分かるよ…。
よく前世にテレビとかで見たやつだよ、あの「つい出来心で」って言ってる人達…。
私もつい出来心でやっちゃったんだよぉー!
どうすりゃいいのさぁぁあ!!
「さて、この氷はちゃんと火属性の魔法で溶けるのかしら…?」
溶けてくれぇー、ちゃんと溶けてくれぇ!!
じゃないと困る!私が困る!
そう思いながら氷の塊を見つめる。すると…
「あら?」
「お?」
レーナさんがまだ魔法を使ってないのに溶け始めた。ありえない早さで。
早すぎだよ!まだだよ!
「フィアちゃん、なにかした?」
「いえ、あの…溶けろ〜って思ってたら…」
嘘はついてないぞ!溶けろって思った理由を省いて説明しただけだ!
「そんなことも出来るのね…、」
「嬢ちゃんすげえなあ!」
ああ、ここに冒険者の皆さんがいなくて助かった!
ん?ここ?ここは奥の解体室。
持ってこられた魔獣を捌くところだってさ。マジックバックができてから狩った獲物を解体せずに持ってくる人が増えたから作ったらしい。
「あら?このフォレストウルフ、まだ生きてるわよ?」
「なに?!」
「だってまだ魔力が流れてるもの…。
死んでたら体内魔力は四散してるわ。」
初耳〜。死んだら体内魔力なくなるのか!
「フィアちゃん、もう1回凍らせることって出来る?」
「ここでお前が倒せばいいじゃねぇか。」
「先に話を聞こうと思ってね。」
なるほど。先に話を聞かれるのか…
まだ言い訳が思いついてない!困る!
「えっと、無理っぽいんですが…」
「そう、ならしょうがないわね。」
そう言い、どこからともなく杖を取り出して構えるレーナさん。
今どこからそれ出したの?!手品?!
「さて、久しぶりに殺るわね…腕がなるわ♡」
“やる”の字と語尾のハートがなんか怖い?!
すぐに氷が全て溶ける。
すると凍っていたフォレストウルフはのそりと起き上がり私の方を向く。
レーナさんが攻撃のため杖を構え魔力を練りはじめたその時。
「クゥーン…」
「「「…え??」」」
フォレストウルフが耳を垂らして尻尾を丸めてしょんぼりして鳴いた。
てか“クゥーン”ってなんだよ、犬じゃん。
「これは…、どういうことなのかしら?」
「俺も見た事ねぇから、わっかんねぇや」
2人は私の方を見る。
え、これ私のせい?こんなの知らないよ?!
「えっと…?」
「取り敢えず魔法撃つのはやめるわね」
レーナさんが魔法を解除してまた杖をどこかへ仕舞う。何処に仕舞ったかわかんない…
「どうなってるのかしらね…、完全に怯えているようだけれど」
そう言いながらレーナさんが近づくと、フォレストウルフは余計に怯えた様子になり、急に私に向かって走ってきた。というより呼び出してきた?
「「あっ!!?」」
二人ともこちらに来ようとするがフォレストウルフの方が早かった。
溶けた氷を戻せるか確認する為に少し近づいていたのが仇となってしまった…。
あ、喰われる…。そう思った。
(調子に乗りすぎたバツかな…?)
フォレストウルフの大きな体が私に飛び掛る
お兄様たちに実際に会ってみたかったな…。
あと学校に通ってみたかった…。
私はかたく目を閉じ、衝撃に備え歯を食いしばった。
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