第31話 帰郷


昨日は本当に1日書斎に篭って過ごした。


書斎にはお父様も居て仕事をしているようだったが、私の方をしきりにチラチラと見ては様子を見に来たお母様に仕事が進んでいないと急かされていた。


領民想いの良い領主…なんだよね?

こんなんで領地は大丈夫なのか?



とまあ、昨日の事はもう置いといて。


今日は予定通りなら、お兄様たちが帰ってくる日だ。“予定通りなら”っていうのはこの世界は電車はもちろんだけど車も無い。

だから馬車移動なんだけど…


王都からウチの領地までには森と、広くて殆ど何も無い平原を2日ほどかけて通過しなければいけない。


さらにその森と平原では魔獣が湧いたりするので、通る人は皆、護衛などを雇う。

それでも、襲われて死亡者が出たという話が後を絶えない。


なので何かあった場合遅れたりするので、あくまで“予定”なのだ。


「さて、予定ではもうそろそろ着くと思うのだけれど…」


お母様が時計を見て窓の外を見ると、ちょうど向こうから馬車が走ってきたのが見えた。


「あら、きっとあれね!外に出てお出迎えしましょうか!」

「はい!行きます!」


私とお母様は門の前まで出て行き、馬車に向かって手を振る。


すると、馬車のスピードが少し上がり土埃を少しあげながら私とお母様の前まで来た。


「フィーアーーー!!」


馬車から私の名前を叫びながらイケメンが手を広げながら飛び出してくる。


「うぎゃっ!」


思わず避けてしまい地面に倒れるイケメン…

もとい私の4つ上の兄。残念なイケメンだ。


「ヴァレリーは相変わらずだね」


クスクスと笑いながら優雅に降りてくる長身イケメン。


「フィア、ただいま。元気にしてた?」


私の前に視線を合わせるようにしゃがみ、頭を撫でてくる。


こちらは7つ上の兄のラウレル。こっちもちょっと残念なんだけど…今はまだ猫被ってるみたい。


「さあさあ、こんなところで話してないで中に入って話しましょう?いろいろ話したい事、あるでしょう?」


お母様に促されて、いつの間にか復活したヴァレリーお兄様とラウレルお兄様と一緒に家に入った。




―――――――――――――――――――



「俺は反対だ!」

「そうだねえ、ちょーっと危険じゃない?」


最近の話になり、お母様が私が冒険へ行っていることをお兄様たちに話したところ…


猛反対されています。


「ちゃんと護衛も依頼してますし…」

「ダメ!危ない!何かあったらどうする!」


速攻で否定するヴァレリー兄様。

その横でラウレル兄様が頷いている。

そういえば記憶ではすごいシスコンだった気がするな…。

歩く練習してて転ぶとその日はさせてくれなかったり、庭に行くだけで護衛をつけるように頼みに行ったり、…。


愛が重そう。

あと歩く練習に転ぶのはつきものだろうが。


「それなら、今度ついて行ってみたら?

それで危険だと感じたら、どうするか考えましょ?」


さすがお母様!名案だ。

面倒なことになりそうだけどね…


「ふむ、それなら…」

「今度冒険へ行くのはいつの予定なんだ?」

「えっと、一応明後日の予定です」

「よし!俺らもそれに付いてくぞ!」


こうして明後日の冒険が大所帯になる事が決まった。


え?お兄様たちだけじゃ大所帯って言わないって?甘いな。


この2人のことだから、護衛のために何人か隠密を連れて来るだろう。

ああ、うち、これでも貴族だから隠密くらい何人かいるのよ?


結構優秀だってお父様がこの前自慢してた。





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