二種類の怪物達が欲望の地を掘り続けた先には、摂理と言う名の底があった。

飢の怪物・堂徳(ドウトク)。
渇の怪物・清倫(キヨツネ)。

彼らが、それぞれに成功させた起業。
彼らが、それぞれに味わった過去が起因する、飢と渇を癒すための仮初めの居場所。

正道ではなく、ほぼ違法な手段で築き上げた砂の城でもあります。

生まれも育ちも違う怪物達。彼らの日常・環境は客観的に見ても特殊です。
普通の価値観も異なります。
なのに。
交差するべくして、二人が出会ったとしか思えない展開は、どれだけ他人を否定しても、蔑んでも、見下しても、人と関わらなければ二人の癒しが得られない。
満たされない、相反する現実を表しているかのようでした。

『飢と渇』を読破した方は、その数だけの感想を持たれるはずです。様々な見方があると思います。
その中にあって、私が感想を持った事。それは、目的や手段はどうあれ、彼らは仕事をして一部ではありますが、確実に経済を回していた事です。

しかしながら、彼らは違法な手段で、それぞれの言い方で見下す誰かを騙して糧を得ています。

言いかえれば、現実にも騙しだまされる可能性がないとは言い切れません。

何故なら、
作者様は別の媒体を通し、経験談・事実に基づくフィクション・世間のシステム・・・等々を、我々に警告を含め情報を発信していらっしゃるからです。
大切なのは、普通の事が出来るようになる事。
危機感を持つ事。
他にも、まだまだありますが、詳しくは作者様の発信の場へと手を、視点を、運んでいただけると幸いです。
『飢と渇』同様、辛辣な内容が多いですが、中にはクスリとさせられる作品も多数あります。

情報リテラシーの重要性を、顧みれる機会ではないでしょうか。
巻き返しがきく方は、巻き返しを。
難しい方は、現状よりも過酷にならないためにも、是非とも最後まで『飢と渇』をご一読下さいますように。

一見、飛び抜けた設定ですが、我々は物語のどこかに所属している気分にさせられる錯覚に陥るかもしれません。

最後になってしまいましたが、
エフ様。素晴らしい物語を、ありがとうございました。
「カクヨム」様のサービスが終了してしまっても、心の本棚に収めさせていただきます。

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