背伸びして入ったカフェで拝読したい。そんな印象を持った物語です。

手抜きなしのイベントと、四季を彩る和菓子が織り成す恋愛ストーリーです。

会社を辞した主人公、果歩。
その果歩が、誘われるように入った和菓子屋の主人、悠一。

果歩は和菓子屋のバイトに就き、雇い主である悠一と同居が始まる展開。
拝読する側のボルテージは、その時点でマックスでしょう。
何かが起きる。起きないはずがない。
期待感は高まります。

しかし、少々のハプニングはありますが、
二人が持つ独特な感性によって、最初から世界が重なるようで重ならない、新たなジレジレ感。
普段、私は恋愛モノは拝読しません(失礼)。
出会えば速攻、交渉成立の図式しかない無作法者の私は、この作品を拝読して目から鱗でした。
恋愛は、結果が先に来るわけではないのだと。
恋愛から見える風景は、こんなにも鮮やかに人や物を取り込み、また、作者様が案内される視点の先には、読者が見逃している思いや景色に気付きを与えてくださるのだと。

単に男女が惹かれ合って結果が出て、ハイ、オシマイ!
ではないのだと。

私が持っていた、恋愛モノの印象を変えてくださった素敵な作者様と作品でした。
もちろん、果歩ちゃんと悠一さんの人柄、和菓子の美味しそうな事。
季節のイベントが持つ空気と色。

何よりも、作品に滲み出る作者様の思いは、恋愛モノに不慣れな私を物語の細部へと案内してくださいました。
季節を彩る和菓子の解説も、押し付けるような長文ではなく、適切な上に丁寧でいて分かりやすく、まるで和菓子のような逸品に感じ入りました。

生意気で失礼な物言いを重ねてしまいましたが、ご容赦いただけると幸いです。

最後になってしまいましたが、
深水映様。
素敵な作品を生み出してくださって、本当にありがとうございました。
また、お邪魔させていただきますね。

ちなみにですが、
私は、『甘い気持ちのわけを教えて~和菓子屋兎月堂同居物語~』を拝読し、本当に和菓子を買いに行きました。

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