トム・ソーヤーの罠(パート3)
京州に戻った僕達が最初に訪れたのは
シロサイの家だった。
京州でも一番高級なマンションに住んでいた。
「シロサイさん、任意同行お願いします」
「...」
僕はそう言って、シロサイを連れ出した。
《京州署 取調室》
「これはあなたの“ライブオン”のフレンドリストです。ここに印が付いているように、ニホンオオカミさんはあなたと
フレンド同士だった。...何処で知り合ったんですか?」
「SNSです...」
恐縮した声で答えた。
「なるほど...、サーバル」
「はーい」
サーバルは卓上にノートPCを置いた。
画面を開き、動画を再生した。
そこには酒の缶と、喋っているニホンオオカミの姿があった。
かばんはこの映像を見た時のシロサイの目の動きに注意を払った。
「あなたの事件当日の動きを言いましょうか。あなたは事件当日、『ライブオン』でニホンオオカミ配信を閲覧していた。お酒が入り、舌が軽くなったニホンオオカミは“大金が入った”とでも、言ったんでしょう。あの日の放送は40分間行われてました。あなたの家から現場までは車で行けば30分ほどです。
あなたは、配信を見つつ、その終了時刻まで待った。終わったのを確認してアパートへ行く。事件当日、ニホンオオカミは部屋に鍵をかけていなかった。
酒に酔ってPCに向かって寝ている所をひとつき」
「ニホンオオカミの所にあった酒缶は
処分したんだよね。もう少しで発見が遅かったら、アルコール検出出来なかったろうし...」
サーバルは言った。
「さて、シロサイさん、最後はあなたの口からお話ししてくれますか?」
かばんは再度シロサイを見つめ直した。
「...アイツ、勝手に私を借金の連帯保証人にしたのよ...。2、3回しか会ってない私を...。それで私は勝手に300万もの借金を背負うことになった。
それで問いただそうとしたけど、音信不通になって...、だからまた、ネットで別人のふりをして、あの『ライブオン』の友達同士になったから、どうしようかと考えてたら、アイツ500万も稼いだとか自慢してて...!」
「なるほど」
かばんは頷いた。
「フェネックさん、自供しましたよ」
かばんは事後報告をフェネックに行った。
「そうなんだ。やっぱりかばんが居ないと、事件解決は難しいねー...。
犯人からしてみてもかばんだけは“敵に回したくない”よね」
アハハと笑って見せた。
「中央署にはアドさんが、お話してくれるそうです」
「じゃあこれで、この事件は解決だね...」
少し表情に曇りが見えた。
「どうしたんですか?」
「あのね、五国地方で連続殺人事件が
起こったんだよ。それで応援がほしいって頼まれてさ…、かばん、行ってきてくれないかな?」
「五国にですか?」
「うん」
「いいですよ、僕は」
「中央に行ってきてもらったばっかりなのにゴメンね」
「課長が謝る事じゃないですよ」
いつもと変わらぬ笑顔でそう対応した。
...これで邪魔者は居なくなった。
私も、“そっちへ行く”からね。
会えないかもしれないけど。
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