第21話由香の直感

同時刻、喫茶店。


「由香ちゃん、こっちです」


僕は由香ちゃんへを手招きした。お昼どきもあって、店内は混雑していた。犯行現場の向かい側の喫茶店に入って、窓側のテーブル席を確保する。


「外、暑いな」

「そうですね、気温が33度以上らしいですよ」

「異常だよ!地球が終わるんじゃないかな」


由香は文句を言いながら、僕の向かい側の席へと着いた。僕は早々と店員を呼びアイスコーヒーを注文する。由香も同じモノを注文した。


「かしこまりました」


店員は言った。


「ああ、早速報告があるのですが、被害者の男性は由香さんの推測通り、ニートでした。親からの仕送りで生活をしていたそうです」


僕の隣に座る持田は言った。

スーツ姿の格好をした警官である。


「続けて」


由香は運ばれてきたアイスコーヒーを口へと流し込んだ。美味いと言う感想を素直に言って窓際の方へと視線を向ける。


「被害者の携帯電話を調べたのですが、メール履歴や着信履歴も全て削除されていました。しかし科捜研で復元した所、被害者の親族以外に第三者と連絡をとっていたらしき痕跡が見つかりました」


「ほー」


由香はテーブルへと肘を突いた。

僕は由香の表情を伺う。


「ところで君はなにをしているのだね?」

「ああ、AKB49の新曲を聞いてます」


僕が素直に答えると、由香は呆れた表情で僕を見詰めている。そのまま持田は言葉を続けた。どうして持田はこんなにも積極的なんだろう。


「今、科捜研が電話番号の特定を急いでます。多分三日以内に判明すると思います。現代は科学が進歩してますので……」


「それで凶器の方は?」

「指紋は検出されませんでした。犯人は指紋を拭き取ったのではないでしょうか。部屋からは智香さん以外の指紋は検出されませんでした」


「ほー」


由香は頷く。

これは難事件になりそうな予感だ。


「智香さんの指紋はどこから検出されたの?」

「玄関の扉のドアノブとお風呂場ですね」

「お風呂場」


僕は条件反射で反応した。

僕ながら機敏な反応だ。


「君は何を想像しているんだ?」

「いえ、智香ちゃんの全裸姿など想像しておりません。妄想の智香ちゃんはバスタオルを一枚、羽織ってました」


「黙れ!!変態」


すると僕は由香ちゃんを見た。


「まさか智香ちゃんを疑っているのかい?」

「お前にしては勘が鋭いじゃないか」


由香に褒められた。


「何でですか?智香ちゃんにはアリバイがあるのですよ」


「お前に話すだけ、無駄だよ。行こう」


由香は早々と席を立った。

当然、僕は全額を払った。

当たり前だけど……

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