第12話赤か青か

僕は喉を鳴らした。


「あくまで仮説だけどね」


由香はその場をあとにした。


僕はそのままリビングに行くと、夜食を作っていた黒川優奈先輩と会う。彼女は赤いドレスを身に包んでいた。


「いつ見ても美しいですね」


僕は思わず口にする。


「ありがとう!坊やの夜食も作りましょうか?」


僕は嬉しい申し出に断る理由はない。


「はい。喜んで」


深夜2時。


僕はテーブルを挟んで黒川先輩が作ったシチューを食べていた。美味しい。喉がうなるほどの出来栄えにおかわりをしてしまう。


「あはは!口に合ってよかったわ」

「黒川先輩」


僕はスプーンを置いた。


「どうしたの?坊や」

「坊やじゃありません。これは僕の独り言だと思って聞いてほしいのです。僕は美鈴と交際していました。そして僕は激しく怒ってます!」

「…わかるよ、ゾクゾクするもの!」


黒川先輩は手を伸ばして、僕の頬についたシチューをふき取る。


「美鈴は、オッパイが大きくて理想の彼女でした。交際を許して頂けますか?すみません。こんな時に……」


僕が言うと、黒川は微笑んだ。


「ダメよ。坊やが美鈴を寝取るなんて許さないわよ」

「どうして?」

「美鈴はあたしの彼女だからよ!」


意味が分からない。

僕は、黒川先輩を睨みつけた。


「だから殺したのか!!!!!!!」


僕は口調を荒くして怒鳴りつけた。

夜中だというのに迷惑な話である。


「殺した?何を言うの?」


黒川先輩は冷静だった。


「黒川先輩が、美鈴を殺したのは分かってます。あの遺書は、黒川先輩が美鈴さんに書かせたモノですよね」


僕が言うと、黒川先輩は言った。


「これは独り言だと思っていいの?」

「はい」


僕はあくまで独り言を言う。


「あなたは、ワイングラスを2つ用意しました。1つは毒入りを。もう1つは自分が飲むために用意したモノです!あなたは先に自分が飲むためのワイングラスに赤ワインを入れて、次に毒入りのワイングラスに白ワインを注いだんです」


「……」


黒川先輩は真剣に聞いてくれる。


「そして、美鈴ちゃんは白ワインを飲みました。どうしてだと思いますか?」

「ああ、美鈴は葡萄アレルギーだからでしょう」

「そうです。赤ワインには微量ですが、葡萄の成分が入っていたのです」


すると、黒川先輩は興奮した様子で拍手した。


「素晴らしいわ。坊や。お見事よ」

「罪を認めてくれますか?」

「ダメよ。惜しいけどダメ」


黒川先輩は赤いドレスを脱いで、下着姿のまま僕の隣へと移動する。彼女の髪から葡萄の香りが漂って、僕は眩暈を覚えた。


「どうして、美鈴を殺したの?」

「どうしてって、可愛かったからに決まっているじゃない」


黒川先輩は太ももを伸ばして、組むと僕へと向き変えた。どうして、と僕が尋ねると、彼女は僕の唇を奪う。


あの時と同じだ。


濃密なキスだ。


「爆弾を仕掛けたの!

坊やの足元よ!!それが解除できたら教えてあげるわね」


僕の肩と彼女の肩が触れ合う。

僕の足元にはダイナマイトが置かれていた。時限装置爆弾だ。タイマー式になっており、あと2分で爆発する。


「僕は美鈴を愛していたんですよ!!!」


僕は泣いた。

それも号泣だ。


情けない姿だと笑えばいいよ。


それほど僕は美鈴を愛していたんだ。


「黒川先輩も僕の悲しみが分かってくれますよね?」


僕が言うと、黒川は逃げ出した。

その前に、僕の両手に手錠をかける。


「ダメよ!!愛したら。

だって、美鈴は永遠にあたしのモノなんだからね」


そう言って、彼女は逃げ出した。


「由香先輩、助けてください」


僕は叫んだ、


「君はバカなのかい?なんて情けない醜態なんだ」


するとリビングに顔を出した由香が大笑いをする。そこまで笑わなくてもいいのに。僕は椅子へと拘束されていた、後ろ手に縛られ自由が利かない。


「君、赤と青、どっちを切りたい?」


⇒解決編につづく。


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