第13話君の名は。

赤か青か。

そんなの決まっている。


「青です、由香先輩」


僕は言った。根拠はない。ただ赤はどうしても切りたくなかった。だって僕と美鈴は今も赤い糸で結ばれているから。


由香は「赤」を切った。

どうして。


「は?」


バチンと音が響く。


「バカなんですか?あなたは」


遅かった。

もう切られた後だった。

しかし、タイマーは止まっていた。


「どうして?」


僕は涙が止まらない。

一瞬、死ぬかと思いましたよ。


「君は「青」を選択した。だから確信したんだ。黒川優奈は「赤」を選択するってね。黒川本人もこんな関係を続けるのは、ダメだと自覚していたのだろう」


「黒川先輩が…」

「だから「赤」を切ったのですか?関係を断ち切る意味を込めて」


僕は納得した。

黒川優奈先輩、恐ろしい子である。


「黒川先輩は、どうなるのですか?」

「ああ、刑事裁判にかけられると思う。父親とは言え人を殺害したんだ!当然、罪は償うべきだろう。でも爆弾の件は不問にする」


「えっと……」


「君は、この件も入れるのかい?」


決まっているさ。

爆弾の件は不問だ。


こうして、三日後、警察が到着し、呆気ない幕切れとなった。僕は一週間振りに太陽を浴びた。すごく爽やかな気持ちになる。


「黒川先輩」


警察に手錠を掛けられる黒川優奈先輩。


「どうして、父親を殺したのですか?美鈴ちゃんは父親を殺したほど憎んでいたと聞きました。それでも、殺す必要はなかったと思います」


「彼女が言ったんだ。守を殺してって。

だから、あたしは守を殺した」


そのまま警察車両に乗せられると、パトカーはサイレンを響かせて向かってしまった。僕は大きなカバンを抱えて天を仰いだ。


「僕は、美鈴のオッパイが好きだったんです」

「変態だな、君は」

「何とでも言ってください!それほど美鈴の事が好きだったんです。恋に理由なんてないじゃないですか?」


由香は呆れたように僕を見た。

改めて礼を言う。


「ありがとうございます!

由香が助けてくれなかったら、僕は爆死でした」


すると由香は言った。


「君が死んだら、あたしが困るからな」

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