第22話夜明け前
翌日。
由香は智香の友人のお宅を訪問した。現在、智香宅には警察がいて、捜査がやっているので友人のお宅で過ごす事を決めたようだった。
呼び鈴が響いて、私服姿の智香が顔を覗かせる。
「どなたですか?」
「探偵の由香と申します」
智香は笑顔を崩さず、由香を招き入れた。友人のお宅は、結構広い。僕は由香の後を追うように部屋へと入る。
「ダーリン」
「大丈夫だよ、ハニー」
智香は僕へと抱き着いた。
そのままハグをしながら居間へと移動する。そのまま椅子へと腰を下ろした。テーブルにはお茶とお菓子が置かれている。
「友里さんは?」
「今は授業で学校に行ってます」
「……智香さんは学校、行かなくていいのですか?」
「学校の許可は頂いているので大丈夫です。昨日、あんな事があったので、一日お休みを頂いたのです」
「ほー」
由香は頷いた。
「お疲れの所、申し訳ございません。少し話が長くなります。よろしいでしょうか?」
由香は話を切り出した。
「少しなら構いませんよ」
「ありがとうございます。えー、先日、被害者の男性がニートだったと言った件ですが、覚えてますか?」
「もちろんです」
智香は言った。
「えー、被害者は交友関係がなかったそうです。しかし、被害者の着信履歴を解析した結果、親族以外と頻繁に連絡をとっていた事が分かりました」
「それが何か?」
「んー。この写真を見て頂けませんでしょうか?」
由香は「機械にそんなに詳しくないので…」と言いながら僕の腋を小突いた。僕は渋々、端末画面を操作する。写真を表示させた。
すると智香の顔色が変わった。
「見覚えがありますか?」
「はい。小学校時代の同級生ですよ」
智香は少し驚いた顔をした。
僕はスマホをしまう。
「えー、ご存じあったのですね。あなたの旧友です」
「そうです、でもこれが何か?」
「まだ判りませんか?
これはあくまで仮説ですが、気を悪くしたら申し訳ありません!!あははっ!今回の事件の被害者はあなたのストーカーです」
すると、智香が言った。
「由香さん」
「はい、何でしょう?」
「あたしを疑っているのですか?」
「話が早くて助かります」
すると智香の顔色が変わって、そのままソファーへと腰を下ろした。テーブルの上には缶コーヒーが置かれており、ペンタブを外す。
「仮にあたしが犯人としましょう」
「……はい、聞きましょう」
「その方はあたしのストーカーとしましょう」
「……はい」
「その方はどうやって、あたしの部屋に入れたのですか?」
すると、由香は頭を抱える。
どうでもいいけど、下手な演技だ。
「んー、痛い所ですね。被害者だと言ったさきほどの男性なのですが、実は行方不明なんですよ」
「行方不明?」
「はい、さきほどの写真の男性は行方不明です。まだ身元が判っていないので、こちらとしては写真の男が、被害者と同一人物だと言えないのです」
すると智香は笑った。
「もー、驚かさないで下さいよ。あたし、犯人だと思ったじゃないですか?」
「申し訳ございません!あははっ……」
何が面白いのだろうか。
「智香さん」
「何でしょうか?」
「たとえばの話ですよ。
たとえば智香さんが犯人だとしましょう。深夜0時過ぎに被害者を殺し、証拠を隠滅して、その間にスマホやその他から被害者と繋がるモノを処分する時間はありません!だって、そもそも彼がここを訪れること自体、奇跡なのですからね」
「この事件は、同窓会当日でなければならなかった」
「そうです」
「でも同窓会当日に、彼がここに来る事を予測する事は不可能です。そう、思いませんか?智香さん」
「確かに」
すると由香は言った。
「でも協力者がいれば話は別です」
「協力者?」
「はい、私はそう考えてます」
「つまり由香さんは協力者が事件に関与していると、考えているのですか?それは誰ですか?」
「分かりません」
分からないなら言わないでくれよ。
心臓が止まったかと思った。
すると、智香はその場から離れた。
どうやら学校から電話があったようだった。
僕は言う
「由香ちゃん」
「どうかしたのか?」
「由香ちゃんは智香ちゃんを疑っているのは分かった。でも、彼女にはアリバイがある。その時間帯、彼女は同窓会に出席していたんだ」
「分かってるわ」
「…でも犯人は彼女なんだね」
「ああ、間違いない」
僕は呆れた。
どうして、そんなにも疑うのかを。
「信じられないな」
「まあ、結末は後篇に持っていこうじゃないか」
由香は言った。
後篇。なんのことだ。
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「えー、この事件は巧妙な殺人計画を企てた智香さんの犯行です。彼女は何らかの方法で被害者を呼び出し、殺害したのです」
⇒後篇につづく。
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