第5話20年前の真実
由香は別室にエリカを呼び出した。
「何なの?話って…」
「犯人が分かったのですよ」
犯人……?
つまり20年前の真相が分かったということか。
「ほお……」
エリカは椅子へと座る。
そのまま煙草を吸いだした。
「エリカさん、あなたを逮捕します」
エリカは苦笑する。
「あなた何を言っているの?」
「20年前、エリカさんは男の子を殺しました。その罪を償ってもらいます」
すると、エリカは声を荒げた。
「どこに証拠があるのよ!」
それには同感だ。
もう証拠はないだろう。
「あります」
「……は?」
「分かりませんか?あなたは自分から墓穴を掘っているのです。どうして、男の子の遺体があそこにあると知っていたのですか?」
「それは、霊能力で透視をしたからに……」
「霊能力はないです」
「あるわよ!現実に見つかったじゃない!」
それは否定しない。
「男の子の服装を教えてください」
「いいわよ!」
まさに口論だった。
エリカは天を仰いで、何か呪文のようなモノを唱えている。
「わかったわ。男の子は制服姿だった。
名門小学校の制服……」
「違います!」
「何でよ?」
「被害者の服装は、安物のブレザーです」
そこで、由香は指を向ける。
「どうして間違えたのですか?」
「そ、それは……」
「20年前の服装まで覚えてなかったようですね」
エリカは「あははは」と笑った。
「だから何?
それであたしの犯した罪だと言えるの?」
「確かに、制服姿でした。
でも発見時にはブレザーとズボンだった。
どうして、制服姿だと思ったのですか?」
「そ、それは」
「事件の際、血痕がついてあなたは、制服を脱がしたのではありませんか?
その制服が見つかれば、指紋が付いているはずです」
それだと僕は指をはじいた。
「見つからないわよ。バカじゃないの!」
「どうして…」
「20年前だし、とっくに処分されているわよ!」
そこで興奮した様子で由香が詰め寄った。
「どうして処分されていると…」
「だから!20年前だし……」
すると警官が来る。
そして、由香へと耳打ちをした。
「男児の制服が発見されました!
あなたの自宅で」
「何ですって!
勝手に家に入ったと言うの?」
「大家さんには許可を頂きました」
「そう言う問題じゃないわよ!」
エリカの口調が荒々しい。
「……クローゼットの下から発見されたそうです!
段ボール箱の中に入っていたそうですよ!!」
血まみれの男児の制服が!!
そこで、エリカの瞳が揺らいだ。
どうして、こんな事になったのか?」
「で、でも時効よ!」
「時効ではありません」
「時効よ」
「あなた、自分の罪を認めるのですか?」
由香は冷たい声で言う。
呆れた、そんな表情だ。
「男児の制服と、あなたの指紋を照合した結果、99.99999999999%一致しました。もう言い逃れは出来ませんね」
エリカは冷や汗を垂らす。
「終わりです!」
由香は言う。
酷く冷たい声で……
すると警官に手錠を掛けられたエリカが、その場をあとにする。
泣いているように思えた。
「どうして男児を襲ったのですか?」
僕は、エリカへと尋ねた。
「可愛かったから。それだけ……」
エリカは死んだ魚のような表情を浮かべていた。
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