第8話クローズドサークル

僕は顔を赤く染めた。


「何をするんです?」


僕は抗議の声を上げた。


「初めてだったかしら!

ごめんなさい。白木に奪われたかった?」


僕は、唇を噛んだ。


「そんな事はどうでもいいのよ」


黒川は、机の上へと二つ折の手紙を置いた。


「これは?」


「脅迫状よ!殺すだの爆破するだの書いてあったの」


僕は手紙を読み上げる。

それは脅迫状だった。


「あたし、怖いわ。ダーリン」


黒川優奈は言うと、僕の胸の中へと飛び込んだ。これも演技なんだろうか――でも彼女の髪から甘いシャンプーの香りが漂ってくる。


「分かりました。お守りします」


と言うことで、別室に居た由香へと泣きついた。


「助けてください。

白木さんと優奈先輩を」


「君はバカなのかい?」


由香はワイングラスを片手に開口一番に告げた。何をバカだと言うのか。僕が視線を外すと、由香は立ち上がる。


「これはクローズドサークルだよ。君」

「は?」


窓辺から映る景色は大雨だった。

それも台風が接近している。


その瞬間、停電した。

どこかに雷でも落ちたのか!


「君、懐中電灯を」


真っ暗な室内で、由香が叫ぶ。


僕はスクールカバンから懐中電灯を取り出し、床を照らした。すると室内に灯りが戻る。停電は一瞬のことだった。


「大丈夫でしょうか?」

「ああ、このバカが怯えていた程度だ」


僕は不満そうに唇を尖らせる。

――失礼な人である。


「すみません、ブレカーが落ちたみたいで」

「ああ、大丈夫ですよ」


僕は笑った


「きゃああああ!」

「今度は何だ?」


二階から女の悲鳴が聞こえた。

僕と由香は二階へと上がると、部屋に六十代ほどの男が刃物で刺されていて死んでいた。ベッドの上は血まみれだった。


「殺人事件」


僕はポツリと呟くと白木美鈴は僕の胸へと飛び込んだ。


「怖かったよ」


「とにかく警察に」


すると真っ赤なドレスに身を包んだ黒川優奈が遅れてくる。


「どうした?騒動しいな」


「優奈ちゃん、お父様が死んだの」


「なに?」


「とにかく警察に」


僕が叫んで、受話器のダイヤルを回した。しかし、警察どころかどこにも繋がらない。もしかしてさっきの落雷で電源がいってしまったのだろうか。


「これじゃあ、警察呼べないわよ」

「この中に殺人鬼がいるって言うの」


「ちょっと落ち着いてよ」


僕はあ然となった。

これじゃあ、まるでクローズドサークルだ。

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