世界が再生し二千年が経った頃、人類は進化し続けて歴史的なことにも関心が向き研究が進められていく、人は世界が滅んだ原因のことを”ラグナロク”と名付け、ラグナロク以前ことも研究が進んだ、するとかつての世界には人間やエルフ、獣人族の種族以外にも多くの種族が存在していたことが分かっていった、そしてその中に”神”や”巨人”と呼ばれる存在も確認された。


 それと同時に一人の冒険者が一つの剣を発見する、その剣は当時ただの剣とされ数々の人の手に渡ったが、持ち主が次々と無惨に死んでいったことから研究者たちが研究を進めるとラグナロク以前の遺産であることが分かった。

 するとそこに突如一人の男が現れるとこの剣は”ダーインスレイヴ”他にも遺産は存在する、と告げいなくなった。


 研究者はこのことから他にも遺産が世界に散らばっていると判断し、遺産を”神々の遺産”と呼称した。

 当時の王族たちは研究者の報告を受けると私欲のために、研究者・冒険者を使い遺産を集めることを命令し見つけた者には一族安泰を約束した、冒険者たちは歓喜し世界中を探索していくことになる、しかし”ダーインスレイヴ”が発見されて五百年が経ち、今現在も一つとして遺産は発見されておらず、あの時現れた男も以降姿を見せていない。



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  グラム、ラグナロク以前に一柱の神が一人の男に授けたという剣である。この剣が世間的に”神々の遺産”と呼ばれるものであることをアルスは知識として知りそれを体感した。

 

 だからこそアルスはこの剣を一年という間、ハールから取り上げられていたのだ。それはアルスも承知していたし納得の上だった。


 それが今自分の目の前にある、アルスは信じられないという気持ちと高揚感のような半興奮状態にあった。


 グラムの刃渡りは百四十センチメートル、刃幅は四センチメートルで見た目はシャープなイメージを与える。

 それでも身長百七十センチに及ばない程度のアルスが帯剣すればたちまち子供が強がって付けているように見えるだろう。

 

 アルスはカバンの中に入っていたベルトを腰に巻くと迷うことなくグラムを左腰に帯剣する、その手際の良さは学生ではなく騎士の技だ。


 一般的にこの世界で剣などの武器をで使用することは禁止だが、持つこと自体は許されている。それは狩猟や冒険者のような職業があることが一番の理由である、元々は一人一人に職業確認を取って取り締まって、五百年前の王族命令が発令されて以降冒険者が爆増したことにより確認していては霧が無いということで廃止、王族命令から暫く経った頃に武器規制の意見も出されたが議論のみだけで実現することは無かった。


 「久しぶりだこの感覚」


 グラムに重さはほとんど無い、百四十センチもあれば重さは二キロ以上なのは普通だが、神々の遺産にはまだ謎が多い。

 ゆえに帯剣した時の感覚は無いに等しいのだが、アルスは懐かしむようにグラムの柄を強く右腕で握りしめた。


 右腕を緩めて柄から手を外すと、もしかするとこれは護身用に送ってもらったのかもしれない、半ば強引に自分に言い聞かせアルスは深く考えないことにした、考えたくなかった。

 

 たとえこの剣にあらゆる思惑が渦巻いていることを理解していても、今はこの高揚感に身を委ねていたかった。

 するとぐぅ~と腹から響き思わずアルスがお腹を押さえる。思えば王都に着いてから何も口にしていない、お腹も鳴るはずだ。


 「外食でもするか」


 アルスはグラムを帯剣したまま外食をすることに決めた。寮でも食事はとれるが、学生の間はこのまま寮に暮らすのだから、寮の食事はいつでもすることができる、それよりも王都がどんなところなのか知らないアルスは外食をするついでに見て知っておきたかった。


 グラムを帯剣していくのは別にグラムを見せびらかしたいわけではない、神々の遺産を一学生が所持しているとなれば大事件だ、しかし幸いな事に神々の遺産であると見ただけで判断できる者はこの世界にはいない、それに護身用と決めた以上外出するのに持っていなければ意味がまったくないと思ったからである。


 アルスが準備をして一階に降りるとソフィアは既に部屋に戻ったらしく、レイトとルチアが一階の食堂で食事をとっていて、こちらに気がついた。


 アルスは剣のことをグラムとは当然説明せず護身用に送られてきたと説明し、少しこの周辺を周ってくるついでに外食することを伝えると納得してもらい寮を出た。

 

 

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