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ルチアに強引に引き連れられているアルスとレイトは、校内を出て三人は校門前にいた。
ようやくルチアは肩組みをやめ腕を外した。
「さてと学生寮はここから五分ぐらいのところにあるからすぐ着くよ」
ルチアは先導して前を進んで歩いていく、レイトもそれを追って行く、アルスはというと先ほどまで頭に当たっていた柔らかい感触が忘れられずに身悶えていた。
「にしてもアルスはこんな中途半端な時期に編入なんてよく出来たよね、あっでも私たちのクラスってことはアルスもなのかな」
不意にルチアがアルスに言った。アルスは普通の思考を取り戻した直後にそんなことを言われてギクリとした。ただ後半部分のルチアの言っていることを察することができず、クラスに何か意味があるのだろうかと不思議に思った。
どういう意味かルチアに聞き返そうとしたが、横からレイトの視線を感じレイトに視線を向けるとアルスを不思議そうに見ていた。
「アルスは専攻を選んだ?」
アルスは本当のことを言うか迷っていると、レイトが突飛な質問をしてきた。それに間抜けな声を上げてしまう、なぜ今の会話でレイトはそんな質問をしてきたのかアルスには理解できない、しかもハールに言われて何の情報も得ずに編入してきたアルスは専攻という言葉を聞いたことが無い。
「まず専攻って言葉を知らない……かな」
やっぱりとレイトは口元に手を抑えて考え込む仕草をする、どうしたのかとアルスが問いかけると手を口元から外して口を開いた。
「シグルズ学園にはね専攻と言って専門的に学びたい分野を選んぶんだ、その中でクラスが分けられる、けどレイト達のクラスは誰一人志願してこの学園に来ていないし専攻も選んでいないんだ」
つまり大多数は専攻分野を選んでシグルズ学園に学びに来ているが、アルスを含めた五人は専攻している分野は無いとレイトは言っているのだ。
たしかにハールに言われただけであって、アルス自身何か学びたい分野があってこの学園に来たわけではない。
それではなぜレイトとルチアは学園に来たのだろうか、アルスは浮かんだ疑問をそのまま口にした。
「じゃあ、レイトとルチアはどうしてこの学園に入って来たの?」
この答えにはルチアが答えてくれた。
「理由は無いけどあえて言うなら学長から招待状が届いたから何となくって感じかな、レイトもそうだったよね?」
何となくというのはルチアだけだと思うがレイトも頷いているということは招待状が届いて学園に入学したようだ。ということは他の二人もその可能性が高い。
アルスは学長が何を基準に招待状を送っているのか考えようとしたが、そんなことをいくら考えたところで分かるわけがないと諦めていると、レイトはもう一つの情報を話してくれた。
「あとレイト達四人にはもう一つだけ共通点があって、それはギフトを全員が持っているんだ」
ギフト、一度世界が滅びた時神々が落としたと言われる遺物のことだ、実際は遺物といっても形のあるものではなく、そのギフトを持って産まれた人間はかつての神々の力を行使することができるのだ。
そのギフトという言葉はアルスにとても身近にある言葉だ。なぜならアルスもギフトを持っているから、だからこそアルスは数年前までラグナロクという組織に入っていたのだ。
実際ギフトは人間のほとんどが持っている、レイトの言う持っているというのは発現しているということだ、発現するのは人間の中で一パーセント以下と言われている。
「そうなのか、ぼくも確かにギフトを持ってるよ」
そのギフト所持者がアルスを含めて五人集まっている、アルスはそれには驚きを隠せないでいた。同時にこれは偶然ではなく何かしら目的があって集められたのだと考えていた、やはりあの学長は底が知れない。
「一体この学園はなにを企んでるんだろう」
レイトが他の建物に隠され見えなくなった学園の方角を見ながら呟いた。
アルスはそういえば一つだけ違うことがあるなと思う、しかしこれを言うと自身がコネ入学であることがバレてしまうと頭で葛藤しながらも、相手は何も隠さずにオープンに話してくれているのだと、自身に言い聞かせてレイト達にいう事にする、
「でもぼくは招待状じゃなくて、父親と学長が友達で学園に入ったんだけどね」
恐る恐る相手の様子を見ると、レイトとルチアは予想外の反応をしていた。
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