アルスは二人が驚いていることに面食らった。特に表情の起伏が乏しいレイトが驚いていることが目に見て分かる。

 やはり同じような入学の仕方をしていたからといって、まだ会ったばかりの人間にコネ入学を言ったのはマズかったか内心焦り、取り繕うように頭をフル回転させ考えたが時間が虚しく去っていくだけだった。 


 「あの学長と友達ってアルスのお父さんってスゴイ人じゃん」


 ルチアが突如発した言葉に、へっ?と間抜けな声を上げるアルス、間髪入れず今度はレイトが喋る。


 「学長は王都で長命なエルフとして有名でその学長は御年二千五百2500歳とか、そんな学長と友人なのは誇れることだと思うよ」


 そこまで言われると確かに、学長と友人だからと言ってコネ入学を幇助ほうじょしてくれるのは相当な仲でなければ実現し得ない事だろうとも思う。

 ただ学長とハールの話題になった時、語気が強くて怒っているような印象を受けた、これは仲がいいのだろうか?

 とりあえずアルスはそうなのかなと疑問形で返事を返した。


 それよりも今はレイトの言葉に気になることがあった。


 「というか学長ってそんなに長生きなんだ」


 ルーシアの長生きっぷりだ。アルスたちの世界の暦は、世界が再生されてから始まったといわれている。

 そして現在、樹暦二千五百十六年じゅれき2516ねんである。つまりルーシアは世界が再生されてから十六年後に産まれたということになる、世界の今までを見てきたと言っても過言ではないだろう。

 すると、


 「私たちが暮らしてる学生寮が見えてきたよ」


 ルーシアが進行方向の右側を指さしてアルスに教える。

 アルスは学生寮の前に立つと、学生寮というより小さな宿舎といわれた方がしっくりと来ると思った、その理由はアルスが学生寮を大量の生徒を収容できる大きなところという固定概念を持っていたからだ。

 しかしアルスの想像は間違っていなかったことを、他クラスの生徒たちが行く先を見ていると自然に証明していた。


 それはアルスが泊まる学生寮のもう少し歩いた先に見える建物が二つ、対をなして塔のようにそびえ立っているのが見える、そこに他クラスの生徒がぞくぞくと入っていくのが見えたからだ。


 「あれは?」


 「あれも学生寮だよ、片方が男子寮でもう片方が女子寮」


 「なんで僕たちはこっちなんだ?」


 当然の疑問だろう、だがそれに答えれるものはいない、両隣の二人を見ても明らかだ。

 これも入学の仕方や専攻と何か関係があるのだろうと思う、でなければ説明がつかない、思えば過ぎ去っていく生徒は全員制服を着ているというのにアルスたちは制服が用意されていない。今のアルスにはすべてが普通の生徒と違うように見えた。


 「これは探る必要があるな」


 アルスは一人誰にも聞こえないような声で決意して、学生寮の中に入った。

 そろそろ陽は沈みかけ、陰に取って変わろうとしていた。



 

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