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 「いや、特には無いように見えるけど」


 アルスは正直に答える。


 「そりゃそうだ、ただ可愛い妹を見てほしかっただけだから」

 

 「はい?」


 クラウスは真面目な顔を破顔させて冗談だよと言いながら写真を内ポケットにしまった、アルスは理解するのにまだ頭が追い付いていなかった。


  

 一度頭の中で整理すると、要するにクラウスは真面目な顔をしてぼくを担いだという訳か。


 「話というのはリインの事についてだからもう一度顔を見てもらっただけさ」


 どうやら話のメインはリインの事らしい、写真まで見せたのだからそうだろうとは思っていた、でなければただ兄が友人に僕の妹は可愛いだろうと自慢しただけだ。

 そう思ってアルスは兄であるクラウスを見ると写真を見せたのが妹自慢も多分に含まれていたことが表情でうかがえた。

 クラウスはどうやらリインにぞっこんらしい。


 「それで妹の話っていうと怪我が消えていたことと関係ある?」


 「察しが良くて助かる、まさにそのことについてアルスに頼みたいことがある」


 「頼まれる内容にもよるけど一応聞かせてくれ」


 クラウスは警察署に行く前の会話において学生であることは承知している、その上で酒の席に誘うのはどうかと思うが、、、


 それはさて置き内容にもよるというのは、学生であるアルスに支障のあるような頼みは聞けないということだ、


 「頼みというのは、ぼくの代わりにリインを守ってほしいんだ」


 それはクラウスの妹の守護を依頼するものだった、アルスもリインの事と言われて漠然と想像はしていた、つまり今日起きたようなことが初めてではないのだ、しかしそれなら分からないことがある。


 「守る理由は何なんだ、今日クラウスの妹は怪我をしていたでも犯人の目的はその剣じゃなかったのか?」


 アルスは犯人の男が奪ったのはクラウスが所持している剣であって妹はあくまで巻き添えに合っただけだと認識している。

 

 「たしかにぼくの剣も奪われていたがこの剣はついでに過ぎないだろう」


 犯人の目的は剣ではなくリイン、アルスは目を見張った。

 

 「でも妹は生きていた、あの男が出てきたということはあの時点で殺されているはずだ、褒めるわけじゃないけどあの男相当強かった、失敗して出てきたとは考えにくい」


 リインはあの時、血まみれであったが死に至るような傷は傍から見て負っていなかった。

 男が失敗したか、元から目的は別にあって傷を負わせるだけで逃げたかの二択ということになる。そのうち後者は男がリインを襲いに戻ったことから自然と男がリインを殺すことに失敗したということになってしまい、アルスの予想は違うことになる。

 アルスは自らの考えが自身で否定できてしまい混乱に陥った。


 しかしクラウスの次の一言で混乱が一気に払拭されることになる。


 「リインは……不死の身体なんだ」



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