16

 食事は早々に終わった、アルスは食事が運ばれてくるなりすぐに食べ終わってしまったためにクラウスも合わせるように早口で食べ終わってしまったからである、思えばアルスは寮を出てからすでに一時間以上が経過しており空腹の限界点をすでに超えていた。


 それでも寮を出てから一連の出来事も一時間の出来事かと思うと、凝縮された濃密な時間だったと言える。


 食事が終わってもすぐには店を退出しなかった、それは先ほどの話で日程合わせをするためにしばらく話し合っていたからである、そういっても学園に編入したばかりのアルスはまだ自身の日程を把握しきれていないためまた追って連絡するということで話は終わった。


 店を出るとクラウスは妹が心配だからと言って自宅に帰っていった。


 アルスも寮に戻るため帰路につく。


 


 「着いたぁ」


 部屋に入った途端にベッドにダイブするとベッドはクッション性が低く、アルスは身体を叩かれたような鈍い音が響いた。


 「ああ、風呂入らないと」


 正直、すでに身体はクタクタで風呂に入る気も起きない、旅をしていたときは風呂に数週間入れないなんて当たり前だったアルスはもう寝てしまおうかとすら思っていた。


 だるい身体にムチ打ってベッドから起き上がって、部屋から出ていこうと出口へ向かおうとしてふと思い出し勉強机に目を向けた。


 そこには勉強机の大半を占領する大きなカバン、そうしてカバンの横に小さく薄っぺらな手紙が置かれていた。


 「帰ったら読もうと思ってたんだ、読んでおくか」


 ハールからの手紙など後回しで読んでもいいが、風呂に入った後では部屋に戻ったらすぐに寝てしまいそうで絶対に読まない自信があった。


 「え~っと、なになに……」


手紙を開いて中身の文章にジッと目を通す、


 「…………」


 「……」


 「…」



 「はっ?」


 この時アルスはハールという男がさらに深く謎に包まれた存在になった。








 


 結局、風呂には入らなかった。



 


 


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