概要
禁じられていると気づいたときにはもう遅かった。無自覚に重ねた背徳はやがて罪となり苦痛を齎す。
王宮の庭で始まった禁忌が様々な運命を巻き添えに育まれ、歪み、ある結末に辿りつくまで。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!地獄で兄上をお待ちしています
誰しもWeb小説で大好きな話というのはあるでしょうが、私はこのお話が特に大好きです!!(愛が重い)
全てにおいて完璧な嫡出の兄・エルゼイアルと、全てにおいて不出来な庶出の妹・ダーシア。母が違うせいで普段は顔をあわせることもなく、接点もないはずの二人。しかし、二人は昼過ぎに王宮の庭園で逢瀬を重ねるという特殊な関係にありました——。
異母兄妹の禁忌の愛の話なのですが、「どうして禁忌に至ったか」の説得力が凄まじいのが好きなところ。
エルゼイアルは美貌も才能も聡明さも頑健な肉体も全て所有していましたが、一つ、魂を崩壊させてしまいかねないほどの傷を抱えていました。それは誰にも気づかれなかったり…続きを読む - ★★★ Excellent!!!歪な想いが絡み合っては血を流す、いばらのように甘美な苦悩に満ちた物語
ゆっくりと読み進めておりましたが、気が付けば飲み込まれ、怒涛の展開に翻弄されて一気に読み終えてしまいました。
物語の主軸となるのは、兄・エルゼイアルと妹・ダーシアの禁忌の愛。
罪深い愛欲に溺れ、互いを求め合い続けた二人は、しかし血の繋がりがあるという理由ではなく、彼らの背後で渦巻く様々な陰謀に巻き込まれて引き裂かれ、そしてそれぞれが重い業苦を背負うことに。
罪と罪、喪失と喪失。
同じ咎を持つ二人が抱き合えば、またその体温に傷付けられてを繰り返す、甘やかだからこそ痛み際立つ愛憎が濃密に描かれています。
二人が行き着く先は、深く穿ち抉れた奥の奥――愛を囁くことも許されぬ、いばらに満ちた楽…続きを読む - ★★★ Excellent!!!黄金の糸と薔薇の花弁で綴られた、愛と背徳の物語
ルオーゼ王国・第三代国王グィドバールには、世嗣ぎの王子エルゼイアルの他に、双子の庶子がいた。母タリーヒ譲りの美しい黒髪をもつ王女ダーシアは、父にも母にも顧みられない孤独な少女だったが、王宮の庭で美しい異母兄エルゼイアルに出逢い、人生が一変する。
「愛しています、あにうえ……。」
閉じられた世界のなかで、血染の絹に黄金の糸と薔薇の花弁をもって刺繍されたような、退廃的で豪華絢爛な物語ーー。
登場人物たちの置かれた状況が、どれも閉塞的で救いがなく、むきだしの感情に窒息しそうになります(褒めています)。怒りも憎しみも、愛も欲望も、嫉妬も憐れみも……どれもが繊細に刺繍された金糸の文字のような…続きを読む - ★★★ Excellent!!!女の甘美な声が残酷な世界に響き渡って耳にこびりついて離れない
この上なく美しい物語です。
豊富な語彙と繊細な言葉選びで積み上げられた世界観は鬱屈としていて、ロダンの地獄の門をほうふつとさせます。ひとを圧倒させるものがあります。
しかしただの雰囲気小説ではないのです。
みんな生きている。
ひどく残虐で、いびつで、みんな今にも一歩向こう側に踏み出そうとしているのに、ぎりぎりのところで人間であることを保っている。
この人たち、今までいったいどうやって生きてきたんだ?と思うほどゆがんでいるのに、確かに生きてきたんだな、というのも分かるんです。
生々しい生。それが綺麗な言葉に包まれてザクロの実のように爆ぜているのです。
主人公のダーシアはお兄ちゃんであるエルゼ…続きを読む