黄金の糸と薔薇の花弁で綴られた、愛と背徳の物語

ルオーゼ王国・第三代国王グィドバールには、世嗣ぎの王子エルゼイアルの他に、双子の庶子がいた。母タリーヒ譲りの美しい黒髪をもつ王女ダーシアは、父にも母にも顧みられない孤独な少女だったが、王宮の庭で美しい異母兄エルゼイアルに出逢い、人生が一変する。

「愛しています、あにうえ……。」

閉じられた世界のなかで、血染の絹に黄金の糸と薔薇の花弁をもって刺繍されたような、退廃的で豪華絢爛な物語ーー。



登場人物たちの置かれた状況が、どれも閉塞的で救いがなく、むきだしの感情に窒息しそうになります(褒めています)。怒りも憎しみも、愛も欲望も、嫉妬も憐れみも……どれもが繊細に刺繍された金糸の文字のような言葉で綴られていて、読者を酔わせてくれます。禁忌と鬱屈と暴力に翻弄されてなお、ひとりの人を愛し尽くそうとするダーシアの心を、美しいと思いました。

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