いばらの咎

作者 田所米子

35

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★★★ Excellent!!!

ルオーゼ王国・第三代国王グィドバールには、世嗣ぎの王子エルゼイアルの他に、双子の庶子がいた。母タリーヒ譲りの美しい黒髪をもつ王女ダーシアは、父にも母にも顧みられない孤独な少女だったが、王宮の庭で美しい異母兄エルゼイアルに出逢い、人生が一変する。

「愛しています、あにうえ……。」

閉じられた世界のなかで、血染の絹に黄金の糸と薔薇の花弁をもって刺繍されたような、退廃的で豪華絢爛な物語ーー。



登場人物たちの置かれた状況が、どれも閉塞的で救いがなく、むきだしの感情に窒息しそうになります(褒めています)。怒りも憎しみも、愛も欲望も、嫉妬も憐れみも……どれもが繊細に刺繍された金糸の文字のような言葉で綴られていて、読者を酔わせてくれます。禁忌と鬱屈と暴力に翻弄されてなお、ひとりの人を愛し尽くそうとするダーシアの心を、美しいと思いました。

★★★ Excellent!!!

どう形容したらよいのでしょうか。
その言葉を、私は持たない。

耽美。退廃。背徳。どれも大いに当てはまり、全て少し違う。
精密かつ緻密に修飾された文章でもって削り出されるダーシアや彼女を取り巻く者の心の振動。それは胎動が如く規則的に、そして不規則に読む者の心を共振させる。

徳に背くのではなく、徳に叛く。そういう言葉を作り、どうにかこの深淵の渦のことを表わそうとしましたが、やはり違う。そう思ったとき、最も美しく、端的にこの物語を表す語の組み合わせを知っていることに気付きました。

いばらの咎。

全て、このタイトルに。
ご一読下さい。

★★★ Excellent!!!

豪華絢爛な文章で、退廃的な世界が書かれています。退廃的な世界が好きな方は是非おすすめいたします。
兄と妹は共依存。でも、様々な事情があって、お互いの魂がどんどんすり減っていきます。しかも、母の虐待と、父の無関心・兄の歪んだ独占欲で、妹は人形のようにさせられています。良く言えば純真無垢なのですけれども。
妹は、どう自我を獲得していくのか、はたまた獲得しないのか、暴走して兄をどうにかしてしまうのか、非常に楽しみです。でも、やっぱりちょっとダーシアちゃんにも楽しい日々が来ることを期待しています。5ミリくらい。

新展開になり、ダーシアちゃんが成長したかと思いきや、兄との共依存が泥沼化する予感がして来ました……。非常に美味しい展開です。
ああ……この焦土感がしんどいですが、わたしはダーシアちゃんを応援しています。

★★★ Excellent!!!

この上なく美しい物語です。
豊富な語彙と繊細な言葉選びで積み上げられた世界観は鬱屈としていて、ロダンの地獄の門をほうふつとさせます。ひとを圧倒させるものがあります。
しかしただの雰囲気小説ではないのです。
みんな生きている。
ひどく残虐で、いびつで、みんな今にも一歩向こう側に踏み出そうとしているのに、ぎりぎりのところで人間であることを保っている。
この人たち、今までいったいどうやって生きてきたんだ?と思うほどゆがんでいるのに、確かに生きてきたんだな、というのも分かるんです。
生々しい生。それが綺麗な言葉に包まれてザクロの実のように爆ぜているのです。

主人公のダーシアはお兄ちゃんであるエルゼイアルが大好き。
――とだけ書くとなんだか微笑ましい兄妹の物語のようですが、二人の間には恋慕の情と肉欲が存在し、幼いながらもあさましく求め合います。
それが父親である王の目には獣のように汚らしく映ったようですが、二人の関係は何があってもけして揺らぎません。
ただ、周囲の策謀によって引き裂かれていく。
それでも私には永遠の愛が感じられるのですね。
なんだかんだ言ってダーシアはその愛を糧に生きていくのだろう。そんなたくましさを感じるのです。
周囲を固めるキャラクターもみんな魅力的です。常に何かやらかしてくれそうな気配を漂わせています。そして期待はけして裏切りません。

この甘美な世界に一人でも多くのひとに浸ってもらいたい……。

(現在第一部が完結したところです。次からの更新も楽しみに待たせていただきます!)