歪な想いが絡み合っては血を流す、いばらのように甘美な苦悩に満ちた物語

ゆっくりと読み進めておりましたが、気が付けば飲み込まれ、怒涛の展開に翻弄されて一気に読み終えてしまいました。

物語の主軸となるのは、兄・エルゼイアルと妹・ダーシアの禁忌の愛。

罪深い愛欲に溺れ、互いを求め合い続けた二人は、しかし血の繋がりがあるという理由ではなく、彼らの背後で渦巻く様々な陰謀に巻き込まれて引き裂かれ、そしてそれぞれが重い業苦を背負うことに。

罪と罪、喪失と喪失。
同じ咎を持つ二人が抱き合えば、またその体温に傷付けられてを繰り返す、甘やかだからこそ痛み際立つ愛憎が濃密に描かれています。

二人が行き着く先は、深く穿ち抉れた奥の奥――愛を囁くことも許されぬ、いばらに満ちた楽園です。


『あにうえ』


甘く囁くダーシアのこの声が、暫く耳から離れそうにありません。

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