最も正統性の高い三国志演義続編の初の現代語訳

三国志演義には、その系統にある文学史に名を連ねている続編や二次創作がいくつかあります。『反三国志』もそうですし、翻訳された『後三國演義(後三国石珠演義)』もそうです。しかし、最も完成度が高い正統な続編はそのどちらでもありません。それは、この通俗続三国志の元となった『三国志後伝』です。
『反三国志』はただのパロディ小説で、歴史IF小説の先駆に過ぎません。『後三國演義』は歴史に名を借りた神魔小説で、『封神演義』の足下にも及びません。
しかし、『三国志後伝』は違います。三国志平話の最終話の『劉備の外孫が匈奴に逃れ漢を再興する』という設定を借り、『三国志演義』とは矛盾がないように、その筋に沿って丁寧に創作しています。
出来が三国志演義に比べて悪いのは事実でしょう。しかし、『三国志後伝』を原作に漢文書き下し文として日本で発行された『通俗続三国志』は同種の軍談が多数収録された『通俗二十一史』全体を眺めて見れば、読み応えのある長編の労作と評すべきでしょう。当時としてはかなり完成度が高く、収録された軍談の中では良作の部類に入ります。
ただ、題材として『三国志演義』のように多くの人に愛されることはなく、内容を練られる機会を失い、未完成のままに世に忘れられてしまったことは非常に残念なことです。
今回は、河東竹緒さんの力により、文章が冗長であるという欠点が大いに改善され、やっと現代語の日本語訳として世にでることになりました。
超訳大いに賛成です。蜀漢の子孫関係の登場人物の多さに辟易される方でも『三国志演義の続きを知りたい』、『三国志の後の歴史を知りたい』、『三国志演義や水滸伝のような一騎打ちの多いあの中国講談風の戦争を読みたい』という方は飛ばし読みでもいいので読まれて下さい。読み終わった頃には、三国志の後の時代についての理解がかなり進み、さらなる歴史興味を満たすことがかなり容易になったことが分かるでしょう。
最後に、河東竹緒さんに大いに感謝をし、完成を願います。

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