『煬帝』と呼ばれる中国の皇帝は歴史好きの人ならご存じの人は多いのではないだろうか。
煬帝とは、かの聖徳太子から、「日没する処の天子」と呼ばれた中国の皇帝のことである。聖徳太子の意図はともかく、これは的確な言葉であり、煬帝はまさに「日没する処の天子」であり、中国を400年ぶりに統一した大帝国を滅亡の淵に追いやる暴君・暗君として知られている。
煬帝に関しては、宮崎市定という日本の中国史の学者の中で神に等しい存在の偉い学者によって、分かりやすい伝記『隋の煬帝』が発行されており、現在でも文庫本として売られている。
また、田中芳樹というこれまた、日本のライトノベル界において帝王に等しい小説家によって、煬帝の時代を中心として『風よ、万里を翔けよ』という小説があり、漫画化もされている。これは、田中芳樹氏の中国ものの小説の中で最高傑作だと私は思っている。
このように実際はともかく、日本における書籍としては恵まれている煬帝であるが、この宮崎市定・田中芳樹が、歴史書以外に参考にした作品こそが、この隋煬帝外史(隋煬帝艷史)なのだ。
元々、『隋煬帝艷史』が原題であり、中国において明代に書かれたもので、日本に輸入されて、『通俗隋煬帝外史』として漢文体で発行されたものである。
これを今回、ふりがなを随所にふった訳と、解説をつけて翻訳したのがこの作品である。
中国史界の神とライトノベル界の帝王に愛されたこの作品をこれからじっくりと堪能してほしい。
また、隋書は近年、翻訳も発行され、隋時代は学ぶことがかなり楽になっている。
我々になじみ深い中国史の戦乱時代を扱った小説と大きく違うが、面白く読んでいただいたら幸いである。