万華鏡をのぞき込むように

中華風世界の後宮を舞台とした、優れた長編を書いておられる作者ですが、短編も素晴らしいのでご紹介します。

一般に、短編は、多くの人間関係を盛り込むべきではないと言われがちですが、この話は見事にその例外です。僅か6500字に男女、男男、女女、という複数の人間関係が入り乱れているからこそ、小さな穴から万華鏡をのぞき込むような、美しい世界が成り立っています。

鍵となるのが、廃太子と宦官の悲恋です。

この話は、中華風ファンタジーではなく、実際の唐の時代を舞台としており、この廃太子も実在の人物です。
その史実と架空の絡ませ方が必要十分!

複数の愛の物語が、この短い中に込められています。

何度も読み返しましたが、そのたびに物語の違った表情が見え、まさに万華鏡のようです。

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