雲間の別鶴

作者 結城かおる

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★★★ Excellent!!!

いやあね! なにこれ!
引用しますけどね!

  冰心が使っている灯りに、
  色鮮やかな蛾が飛び込んで、
  じゅっと燃え尽きた。

怖! こっわ!


ボキャブラリーを
うまく漢文調に寄り過ぎないレベルで
調整されつつ、艶やかさを
ふんだんに振り撒いた文章の中に、
突然ねじ込まれる、これ!
これですよ!


でまぁ、これが後半で回収されるわけですが、
うーん、書かない方がいいなこれ。


自分が知ってるのはこの物語の時代より少し昔、
司馬氏の立てた晋代の史書に載る
志怪小説の類なんですが、
晋書の成立が唐代だってことを考えると、
なんかこう、いろいろ薄らぼんやりとした
繋がりを感じざるを得なかったりします。


宦官って生殖機能ぶった切られるわけですけれども、
結局のところ「承認してくれる誰か」を求めるのは、
人間心理として消しようがない。

そいつの姿を、凍てついた鶴と、
春の池に浮かんでいた鴨の対比で描き出す。


うーん、幽玄の世界。志怪的なものは、
自分もどっかで挑戦しておきたいなー。

それもまた、中国史の一面なわけですし。

★★★ Excellent!!!

中華風世界の後宮を舞台とした、優れた長編を書いておられる作者ですが、短編も素晴らしいのでご紹介します。

一般に、短編は、多くの人間関係を盛り込むべきではないと言われがちですが、この話は見事にその例外です。僅か6500字に男女、男男、女女、という複数の人間関係が入り乱れているからこそ、小さな穴から万華鏡をのぞき込むような、美しい世界が成り立っています。

鍵となるのが、廃太子と宦官の悲恋です。

この話は、中華風ファンタジーではなく、実際の唐の時代を舞台としており、この廃太子も実在の人物です。
その史実と架空の絡ませ方が必要十分!

複数の愛の物語が、この短い中に込められています。

何度も読み返しましたが、そのたびに物語の違った表情が見え、まさに万華鏡のようです。

★★★ Excellent!!!

ひとりの女官が、かつて古い時代に池に沈んだ宦官の情念(怨念!?)に振り回されるお話です。
というと、ホラーかもしくはラブコメか、と誤解されてしまうかもしれませんが、ラブロマンスです。
どこか無邪気で素直な木蘭には、絡まり合う愛憎は少し難しかったかもしれません。それがなんだか少し可愛らしくもあり、重厚な世界観や文体でありながらするする読めます。漢字の散りばめられた中華世界観ならではの文体はむしろテンポがよく読んでいて気持ちよく、酔っ払ったり恋について考えたりする木蘭を逆にコミカルにしている印象です。
彼女とこの宦官が将来どうなるのか気になって仕方がない!
彼女が主人公のお仕事ものも面白そう、とか何とかいろいろと宮中を想像させてくれるお話でした。

★★★ Excellent!!!

6000字強の短めの作品、ということでお試しとして気軽に読めるかな、と思って開いてみました。
お試しとしての存在感は充分でした。思っていた以上に遥かに濃厚な内容の作品でした。
太平公主の頃の唐の宮殿を舞台として、その時代の歴史要素をふんだんに盛り込んでいて香り高さも充分。
華やかな後宮のウラのドロドロした陰鬱な部分もホラー的に描いているし、男女、男男、女女の恋愛の要素までも入っている(苦手な人でも嫌悪感を抱くほどではなく、あくまで少しです)。
物語展開としても伏線回収要素があって、この短い中で多くの要素が凝集されていて、満腹満足なのでした。

★★★ Excellent!!!


三国志や水滸伝などで、メインストーリーとは別の挿話が描かれていることがしばしばある。この作品はそのような挿話のようで、この作品が組み込まれた作品を読んでみたい気持ちにさせられる。

それは作品世界、張り詰めた空気、新旧の愛憎、奇譚的なストーリーによって魅力的に仕上げられているから。

美しい描写で織られた不思議な世界を是非楽しんでいただきたい。