和歌のようなもの

作者 青丹よしお

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目次

連載中 全98話

更新

  1. 夕まぐれテールライトの赤い灯がぬれた路面に落ちてちらばる
  2. いつの日になくしただろうふかふかの布団がさそうあの寝心地は
  3. 仲春の見れば夜空に星々はうつつに光るなみだにもにて
  4. 見上ぐれば桜の花に雲かかり羊の聲す春の夢かも
  5. 時の川ながれは絶えて夢の苑に出立つ見ゆるむかしびとかも
  6. クの音は耳に親しむサの音は人の心に雲を呼ぶらし
  7. 風の強い日のことだったベランダに乾した布団が飛び立ったのは
  8. 情にやほださるることあるまじと心は常の旅路にあるを
  9. 初夏の候マクドナルドの隣では空の容器が風に転がる
  10. 楽しみはものなど飲むとうちあふぎよき掛軸の姿見るとき
  11. わたしはね女の子よとその人の薄桃色のマスクは言って
  12. 外つ国の花と思へど青丹よし奈良にしあれば古思ほゆ
  13. ※注 短歌ではなく旋頭歌を載す とかくして公の場にスマートホンをのぞき込むひとりとわれもなりにけらしも
  14. 敷島に源氏ありとふ人あらば後の世かけて友といはじな
  15. ※注 本文に長歌とそれに係ることを載す
  16. 苟も八雲の道を行く我ぞ万葉の書を枕に敷かむ
  17. 木洩れ日のにほふ腰掛け清くあれど草深くして座りがてにす
  18. 若き女の今様衣妙にして恐ろしきかも美しきものを
  19. 石上故郷恋し畳なはる青山脈のその懐し
  20. 看護婦の働く観れば古の采女もかくやと思ほゆるかも
  21. 久しぶりに日記付けむと取り出だせば一年余りすでに経にけり
  22. 黄昏の世にしもあれどよく喰はゞ暖かゝらば楽しくもあらむ
  23. かねてより病を防ぐ試みも過ぎては毒といふべかりけり
  24. ひさかたの青き風ふく夏の日に過ぎにし春の夢を見るかな
  25. 終日蒲団に臥して魂を左の胸に息まするかも
  26. むらぎもの心のいろにそめあげて桜の涙い継ぎ散りゆく
  27. おもしろきことを言はねば人間にあらざるとしも言ふが如しも
  28. 如何ばかりせみの鳴く音の大けれど人に優りてうるさきはなし
  29. 夢に見ることさへあらむ黒人とゲルマン人のをとこの巨躯は
  30. 自転車を半日漕いで口にした拉麺の味忘れえめやも
  31. 国人にわびの言葉の多くしていさゝか我は答へかねつも
  32. 誰からも食事の邪魔は御免にて人に知られで喰ふよしもがな
  33. ふるさとの高速道路のとなりなるふるきやしろに落葉つむらむ
  34. かかる身の知れては蕪村先生に叱らるるよと奮ひ起ちつつ
  35. わが友はいづれなりやと尋ぬれば置き去りにせし記憶なりけり
  36. 借りてきた猫みたやうに秋雨の電車のゆれに委ねつるかも
  37. 黄色なる日暮れの空にうばたまの烏のゆくを見れば楽しも
  38. 若ければ美しければちやほやとされやうものをいかにかはせむ
  39. 私に足らざるものは漢籍における下地とさとさなりけむ
  40. 拉麺の口で長崎ちやんぽんを食べればすこしもの足りぬかも
  41. 都にもいささか慣れて遠くやる目のかすむ日は悲しかりけり
  42. つきあひは上面にてもありたしとかく思ひをりわかりあへねば
  43. つながりは絶えてひさしくなりぬれど心のおくの友にこそあらめ
  44. 灰色の煤にまみれてうちひさす都に暮らすその人あはれ
  45. 口かずは寡なきをもて善しとなす聖も多く斯くは説きけむ
  46. 横顔に娘のときの面影を見せつつ物を思ふ人かも
  47. ドリームズカムトウルーなるグループのなにがしの曲聴けばかなしも
  48. ひとの身のよごれやすきを知るときは戸を出づるさへもの憂かりけり
  49. あをによし奈良の都を一望にながめし夜は忘れざりけり
  50. 見たままが詩になるならばそのひとの眼はビードロの細工なるらむ
  51. 軒先にあそぶすずめをながむれば世を遁れたる心地こそすれ
  52. 遠くまで来ると思ふぬばたまの夜に浮かびたつ街を望めば
  53. 童にはあらざる身さへ時間とのおひかけつこに日が暮れてゆく
  54. わが体みどりになると思ふほど日にいくたびも茶を啜りけり
  55. くはしめの浮かぬ顔せる見るときは胸ふたがりて思ほゆるかも
  56. 蝶になりはた蝶を追ふひとになりながき春日を遊び暮らすも
  57. この国に桜を愛しむ民ありしとこの世のかぎり語り継ぎこそ
  58. 化粧してよき香をまとふ折節は同じき人と思ほえぬかも
  59. ますらをと思へる我もClariSの声聴くときは涙たぎちつ
  60. いかで我益荒男子に生まれけむ未だに事を成し遂げずして
  61. 珈琲の目づまりおこす日はかくも胸糞わろき心地こそすれ
  62. この世より色も失せよと思ふほどつらくかなしきこの夕べかも
  63. 子どもなき国に生まれてわが怒り未だに暫し止まざる如し
  64. ますらをと世に生まれ出で怖しとは口の裂くとも言はじと思ふ
  65. 五月雲見つつしをれば鳥ならぬこの身の上は思ほゆるかも
  66. その人のうち笑むときは雨雲をはらひて真日の輝くごとし
  67. 生涯を賭すとぞ言はむ蟹の這ふライフワークと言はむよりかは
  68. わが心見つめてをれば泣き虫の子どものすがた見えにけるかも
  69. 小説のPV数や応援の数の推移は見れど飽かぬかも
  70. ねむられぬ病はやると聞くときは泰平の世も穏やかならず
  71. 平成は終はりけらしも花ぐはしさくらももこの眠ると聞けば
  72. 言葉ほどあてにならざるものはなし嘘をつくこそ人の本意なれ
  73. 安全が第一ならば移りゆくこの街なみは京の碁盤目
  74. 石炭をもっと燃やせと寒冷化する惑星に科学者の声
  75. 素人がある日突然山奥に分け入るように愚かしきこと
  76. 京都市は右京にありと吾が聞ける小川珈琲の豆が香ぞ高き
  77. 教室の片隅にゐてもの言はぬ見目よき乙女見がほしきかも
  78. 世の中にうまくいかざる折ふしはまくら辺にたつ伯母がかげかも
  79. 傷みたる珈琲豆が苦しみの声聞くごときこの朝かも
  80. 滝沢は絶えてひさしくなりぬれど名こそながれてなほ聞こえけれ
  81. 春過ぎて夏去りぬればうつせみの身に吹きそむる秋の風かも
  82. 辞めようと思うてゐたに辞めざるは何の因果と問ふもおろかし
  83. 人間に生まれてきたはいいけれどいまだに道を知らぬ顛末
  84. わがつけるスーツや革の靴のごと身はくたびれて汚れけるかも
  85. 幼子はよく泣くものと身にしみて思ひ知りたるこの夕べかも
  86. さくらなる三文字の大和言葉にて呼ばるる花のちるさま憐れ
  87. 男らと世の女らの和やかに相思ひつつ生きむ道もが
  88. 吾の如きおもしろからぬ人の子もありと知るべし物思ふときは
  89. 世の中に言葉にならぬ思ひあるうちは下手なる歌も詠むべし
  90. 純文学その芳しき名の毒に幾千万の蝶あてらるる
  91. はだかにて生まれし身さへ日とともに失はれゆくものはありけり
  92. 夢を見ることを詩人の条件と吾は唱へむ寝ても覚めても
  93. コンピユーターゲームいざせむその先に仮令幾多の沼が待つとも
  94. 独りにて生まれて独り生けるごとき顔せる吾に秋の風ふく
  95. いつの代も社会はろくなものならずいささか吾は疲れけるかも
  96. 世の中に病名の数増ゆる日は病まざる人も絶えて果つべし
  97. 世の中に半ニートなるいぶかしき言を聞く日は憤ろしも
  98. うかうかとしてはネツトの大海に呑み込まるべし砂粒のごと