和歌のようなもの

作者 青丹よしお

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目次

連載中 全243話

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  1. 夕まぐれテールライトの赤い灯がぬれた路面に落ちてちらばる
  2. いつの日になくしただろうふかふかの布団がさそうあの寝心地は
  3. 仲春の見れば夜空に星々はうつつに光るなみだにもにて
  4. 見上ぐれば桜の花に雲かかり羊の聲す春の夢かも
  5. 時の川ながれは絶えて夢の苑に出立つ見ゆるむかしびとかも
  6. クの音は耳に親しむサの音は人の心に雲を呼ぶらし
  7. 風の強い日のことだったベランダに乾した布団が飛び立ったのは
  8. 情にやほださるることあるまじと心は常の旅路にあるを
  9. 初夏の候マクドナルドの隣では空の容器が風に転がる
  10. 楽しみはものなど飲むとうちあふぎよき掛軸の姿見るとき
  11. わたしはね女の子よとその人の薄桃色のマスクは言って
  12. 外つ国の花と思へど青丹よし奈良にしあれば古思ほゆ
  13. ※注 短歌ではなく旋頭歌を載す とかくして公の場にスマートホンをのぞき込むひとりとわれもなりにけらしも
  14. 敷島に源氏ありとふ人あらば後の世かけて友といはじな
  15. ※注 本文に長歌とそれに係ることを載す
  16. 苟も八雲の道を行く我ぞ万葉の書を枕に敷かむ
  17. 木洩れ日のにほふ腰掛け清くあれど草深くして座りがてにす
  18. 若き女の今様衣妙にして恐ろしきかも美しきものを
  19. 石上故郷恋し畳なはる青山脈のその懐し
  20. 看護婦の働く観れば古の采女もかくやと思ほゆるかも
  21. 久しぶりに日記付けむと取り出だせば一年余りすでに経にけり
  22. 黄昏の世にしもあれどよく喰はゞ暖かゝらば楽しくもあらむ
  23. かねてより病を防ぐ試みも過ぎては毒といふべかりけり
  24. ひさかたの青き風ふく夏の日に過ぎにし春の夢を見るかな
  25. 終日蒲団に臥して魂を左の胸に息まするかも
  26. むらぎもの心のいろにそめあげて桜の涙い継ぎ散りゆく
  27. おもしろきことを言はねば人間にあらざるとしも言ふが如しも
  28. 如何ばかりせみの鳴く音の大けれど人に優りてうるさきはなし
  29. 夢に見ることさへあらむ黒人とゲルマン人のをとこの巨躯は
  30. 自転車を半日漕いで口にした拉麺の味忘れえめやも
  31. 国人にわびの言葉の多くしていさゝか我は答へかねつも
  32. 誰からも食事の邪魔は御免にて人に知られで喰ふよしもがな
  33. ふるさとの高速道路のとなりなるふるきやしろに落葉つむらむ
  34. かかる身の知れては蕪村先生に叱らるるよと奮ひ起ちつつ
  35. わが友はいづれなりやと尋ぬれば置き去りにせし記憶なりけり
  36. 借りてきた猫みたやうに秋雨の電車のゆれに委ねつるかも
  37. 黄色なる日暮れの空にうばたまの烏のゆくを見れば楽しも
  38. 若ければ美しければちやほやとされやうものをいかにかはせむ
  39. 拉麺の口で長崎ちやんぽんを食べればすこしもの足りぬかも
  40. つきあひは上面にてもありたしとかく思ひをりわかりあへねば
  41. つながりは絶えてひさしくなりぬれど心のおくの友にこそあらめ
  42. 灰色の煤にまみれてうちひさす都に暮らすその人あはれ
  43. 横顔に娘のときの面影を見せつつ物を思ふ人かも
  44. ドリームズカムトウルーなるグループのなにがしの曲聴けばかなしも
  45. ひとの身のよごれやすきを知るときは戸を出づるさへもの憂かりけり
  46. あをによし奈良の都を一望にながめし夜は忘れざりけり
  47. 見たままが詩になるならばそのひとの眼はビードロの細工なるらむ
  48. 軒先にあそぶすずめをながむれば世を遁れたる心地こそすれ
  49. 遠くまで来ると思ふぬばたまの夜に浮かびたつ街を望めば
  50. 童にはあらざる身さへ時間とのおひかけつこに日が暮れてゆく
  51. わが体みどりになると思ふほど日にいくたびも茶を啜りけり
  52. くはしめの浮かぬ顔せる見るときは胸ふたがりて思ほゆるかも
  53. 蝶になりはた蝶を追ふひとになりながき春日を遊び暮らすも
  54. この国に桜を愛しむ民ありしとこの世のかぎり語り継ぎこそ
  55. ますらをと思へる我もClariSの声聴くときは涙たぎちつ
  56. いかで我益荒男子に生まれけむ未だに事を成し遂げずして
  57. 珈琲の目づまりおこす日はかくも胸糞わろき心地こそすれ
  58. この世より色も失せよと思ふほどつらくかなしきこの夕べかも
  59. 子どもなき国に生まれてわが怒り未だに暫し止まざる如し
  60. ますらをと世に生まれ出で怖しとは口の裂くとも言はじと思ふ
  61. 五月雲見つつしをれば鳥ならぬこの身の上は思ほゆるかも
  62. その人のうち笑むときは雨雲をはらひて真日の輝くごとし
  63. 生涯を賭すとぞ言はむ蟹の這ふライフワークと言はむよりかは
  64. わが心見つめてをれば泣き虫の子どものすがた見えにけるかも
  65. 小説のPV数や応援の数の推移は見れど飽かぬかも
  66. ねむられぬ病はやると聞くときは泰平の世も穏やかならず
  67. 平成は終はりけらしも花ぐはしさくらももこの眠ると聞けば
  68. 言葉ほどあてにならざるものはなし嘘をつくこそ人の本意なれ
  69. 安全が第一ならば移りゆくこの街なみは京の碁盤目
  70. 石炭をもっと燃やせと寒冷化する惑星に科学者の声
  71. 素人がある日突然山奥に分け入るように愚かしきこと
  72. 京都市は右京にありと吾が聞ける小川珈琲の豆が香ぞ高き
  73. 世の中にうまくいかざる折ふしはまくら辺にたつ伯母がかげかも
  74. 傷みたる珈琲豆が苦しみの声聞くごときこの朝かも
  75. 滝沢は絶えてひさしくなりぬれど名こそながれてなほ聞こえけれ
  76. 春過ぎて夏去りぬればうつせみの身に吹きそむる秋の風かも
  77. 辞めようと思うてゐたに辞めざるは何の因果と問ふもおろかし
  78. 人間に生まれてきたはいいけれどいまだに道を知らぬ顛末
  79. わがつけるスーツや革の靴のごと身はくたびれて汚れけるかも
  80. 幼子はよく泣くものと身にしみて思ひ知りたるこの夕べかも
  81. さくらなる三文字の大和言葉にて呼ばるる花のちるさま憐れ
  82. 男らと世の女らの和やかに相思ひつつ生きむ道もが
  83. 吾の如きおもしろからぬ人の子もありと知るべし物思ふときは
  84. 世の中に言葉にならぬ思ひあるうちは下手なる歌も詠むべし
  85. はだかにて生まれし身さへ日とともに失はれゆくものはありけり
  86. 夢を見ることを詩人の条件と吾は唱へむ寝ても覚めても
  87. コンピユーターゲームいざせむその先に仮令幾多の沼が待つとも
  88. 独りにて生まれて独り生けるごとき顔せる吾に秋の風ふく
  89. いつの代も社会はろくなものならずいささか吾は疲れけるかも
  90. うかうかとしてはネツトの大海に呑み込まるべし砂粒のごと
  91. あかねさす秋の夕日が天を衝くビルの谷間にしづみ入るまで
  92. 逆立ちをしてもこねこはこねこなり上から読んでも下から読んでも
  93. 春よりは秋がよけれど桜花さくころはそのかぎりではなし
  94. 音のなき世に生まれせばいかばかりのどけからましこのわがこころ
  95. 麗しくわかき娘のあるときは目こそ惹かるれ益荒男にして
  96. 依存する覚悟があれば何らかに依存しながら暮らしてもよい
  97. 共学の大学みればおぞましき心地こそすれ何となけれど
  98. ロヂツクを積み木のやうにつみあげて天へと届く塔になるまで
  99. 我ひとりこの世に立ちてあるごとく思ひつつありさびしきものを
  100. 君が代におよそいくさのあるときはきのこの山とたけのこの里
  101. しみじみと思へばふたりゐるやうな心地さへする冬は来にけり
  102. 神仏は心のうちに棲まはせて虫魚のごとく折にふれ見む
  103. 優しいと言はれるけれどその実はこの肉体が空つぽなだけ
  104. ちはやぶる神も見そなはせわが怒り天を焦がして即ち止むを
  105. メロスらはいまは罷らむ王宮の処刑台より友待つらむそ
  106. 珈琲を愛する者は度し難しその苦さをも愛すとぞ言ふ
  107. 句を吐かずなりぬるときに某はあの世へ逝くとひとに知られむ
  108. フランスの文学好む人等とは仲よくなれぬ心地もぞする
  109. 世の人の働くときに閑を得て浩然の気を養はむのみ
  110. ひとの子を思ひ通りに繰れるものといつの頃より思ひそめけむ
  111. 短歌とは心に深く思ふことを一気呵成に詠み下すべし
  112. 声優にならむと言ひて東京に出でにし人し思ほゆるかも
  113. 楽しみを探しに街へ出づるときふたたび人に生まるる心地す
  114. わたくしに俳諧的の野心あり成してならざることやあるべき
  115. うらぼんの月を踊りに更かしつつ阿波でこの世を過ぐしてよとや
  116. 人間のその尊厳のみなもとを思ふ日はあり死のくろきふち
  117. 酒を飲みたばこを吸ふもゆるやかにおのれを殺す刃にぞありける
  118. 人の世の五十年にして終はりなばいかに嬉しきことにぞありける
  119. 衣ほせば六甲颪ふきおろすさむき日和となりにけるかも
  120. あをによしならの都はさびれつつ街のなかにも鹿ぞのさばる
  121. 銀の匙でコーヒー粉をすくふ時しあはせになりたるごとし
  122. 外套の隠しのなかの懐炉などもてあそびつつ物をこそ思へ
  123. 賢しらに専門用語を使用して知つた気になる愚をしぞ思ふ
  124. わが顔をみにくく思ふことしあればけふもあしたも生きづらきかも
  125. 恵まるるかたちを頼み驕りたるひとはみながら醜かるべし
  126. カテゴリやジヤンルの溝のふかくして出会へたときの殊にうれしさ
  127. 情よりも理を重んずる我にして新たしき歌よみ出でむとす
  128. 世の中にだれとだれとがくつつくといふはなしほどつまらぬはなし
  129. 百年の俳句暗黒時代へとなるをさびしく思ふころかも
  130. ひさかたの光るかぜふく国原につばめとなりて天翔らまし
  131. 閑静な住宅街を歩きつつ悲しび起こる昼下がりかも
  132. 死にたいとつぶやく声が六畳の間にひろごりて消えて入るまで
  133. 世の中をガラス戸越しにながめつつ衰へぬべき我と言はめやも
  134. 優しさはポーカーフエイスのその下に隠しても持つ満面の笑み
  135. 心より愛する物のある時はやや減ずべし生のくるしさ
  136. 大和より極楽へゆく旅路にはさくらの花の絶えずも散らな
  137. どこから来てどこへ行くのか我と我が身に問ひながらみじろぎもせず
  138. 部屋中にコーヒーの香の弥漫するよき朝とはなれりけらしも
  139. 陸奥のひとの気質を受け継いでやや生真面目になりにけるかも
  140. 世のなかは楽しんだ者勝ちならし賢しらをして遊ばずは悪し
  141. 経るときは新感覚といふ語さへすでに手垢に塗れぬるかも
  142. がつかりとせらるることは店員の声高らかに響きわたるも
  143. 酒ゆゑにわが世のさかり失ふはやや惜しけども悔ゆとやは言ふ
  144. いざ金を手に握りしめあの漫画買ひに走らむ雨は降るとも
  145. 生活に余裕があればグローブにボールにバツト持ちて集はむ
  146. きよき夜もバレンタインの日もすぎて生涯独身ならむとぞ思ふ
  147. さけを飲み菓子を頬張りコーヒーを啜りつつ見るおぼろ月かも
  148. 見返りを求むることを恥とせむ愛は与ふる徳にしにあれば
  149. 停滞は悪にぞあるべきされば身は走るがごとく生きて朽ちなむ
  150. 身はいまだわが世の主役にならざらし名脇役といふにはあらねど
  151. わがもとに睡魔来たりて糖質を制限せよと囁きにけり
  152. まじめさが何の役にか立ちやせむまじめなりとて褒められけれど
  153. 【長歌一首併せて反歌】被遮断悲哀陳述歌《ブロツクせらるる哀しびを述ぶるの歌》
  154. 人間は変はるものぞと謳ふべく倦まずたゆまず歩くころかも
  155. 世のなかに楽しきことの多くして我がよむ歌は日の目をも見ず
  156. 頭脳へと冷えた空気を送りつつ覚めやらぬ身を覚ますころかも
  157. 小説の作者の腕が確かにて安堵を得たる挿絵画家かも
  158. わたる世にことばを武器にも防具にも為さむと思ふ詩人のこころ
  159. 小説は論理的なり詩歌には論理の飛躍あるべかりけり
  160. 音楽に詞と曲あれどより多く詞の愛さるる心地こそすれ
  161. 鶏のごと碗の底なるめし粒を拾ひあげては口に運べり
  162. ありとある匂ひの記憶あらませばいかにわが世は豊かならまし
  163. 人柄の悪しきがために詩文さへ顧みられぬときぞ悔しき
  164. リ○トンの紅茶飲みつつ味はひに驚かれぬる春の夕暮
  165. 金あらばと思ふ仮定の実りなさ急に稼ぎの増えるものかは
  166. 我々の贔屓のチーム負ける日はわが世の夏も果てぬとぞ思ふ
  167. 好きなりしアニメ見むためすみやかに元気を出だせこの我がからだ
  168. 世のなかにドン・キホーテを読みしひと少なかるらし肩身の狭さ
  169. 【旋頭歌】ものがたりしてどうなると問ふはあやなし知と行は分かちがたくも結びつければ
  170. 漫画家はやさしかりけりからつぽの身にさへしかと夢を見さする
  171. 饒舌になりたくなるを抑へてはわが作品に語らするかも
  172. 世のなかの真中にありて立ちつくすさくらのはなのちる夕かも
  173. そのかみにふたりで行つた動物園閉園になると聞けば悲しも
  174. そのかみのトルコの王も愛しみけるねこぞまことの宝なるべき
  175. 凡人といふと言へども特別の才あらざりと誰か知るべき
  176. 思ひきや使ひ捨てなるマスクさへ洗つて干してまた使ふとは
  177. 永の日をキヤツチボールをして暮らしこの世の春に飽きもせぬかも
  178. 世のなかに疑心暗鬼のあらしふくこの春辺こそものうかりけれ
  179. そのひとを思ひ出すときため息のもれもこそすれ年甲斐もなく
  180. 世にをりてかなしきときは思ひだすゲームボーイの電子音かも
  181. おのれにはそれしか無しと思ふとき世を遁るべき道はひらけむ
  182. カラオケに行けずなる日を思ひつついのちのかぎりいまは歌はな
  183. 何ごとも年相応と思へるをひげを伸ばせぬことがかなしさ
  184. 冗談のひとつも言へぬ我にして会社勤めを憂しとしぞ思ふ
  185. 何らかになれるとすればねこのごと気高きものになりたかりけり
  186. 現代の医療をみれば人間にやさしからざるこの世のすがた
  187. 青葉照る白日のなかいつせいに鳩とびたちて戦始まる
  188. かかる世に生まれきたりてむなしさを払はむ術をいまだにしらず
  189. 反対の方を向いてもむらぎものこころは君の方をこそ向け
  190. つややかに洗ひあげたる黒髪をふはと掻きあげ物も思はじ
  191. 私をなみして仕事をせしあとの独酌をするときの楽しさ
  192. 願はくはどこのだれでもない人になつてこの世を渡らむことを
  193. プロツトは中長編を書くときに役に立つべきものとこそ聞け
  194. 恋したきいきものにこそ生まれしか妻呼ぶねこの鳴く音かなしも
  195. 街中ゆかへり見すれば剱岳富山の名こそ伊達にあらざれ
  196. わが席の右のうしろにゐる人を一日思へば日は暮れぬらし
  197. 労働の市場におけるわが価値の低さ思へば胸安からず
  198. 愛情のこまやかげなる女子を見つつ慰むこのわが心
  199. 【長歌】むらぎもの 心にうかぶ 事どもを そのまま言に なすべしと ひとは言へども 言霊の 幸ふ国の 民草と 生まれしからは 呑みかぬるかも
  200. 人間を失格になる一歩ほど手前に来つつ踏んばるごとし
  201. あなたへの結婚指輪このときは愛したことを示す証に
  202. 人の身の冷たかりせば情愛の炎も咲かずあだに消えまし
  203. 酒飲めば熱くなりたる心地せしむかしは遠くなりにけるかも
  204. カラオケで歌はむことの楽しさも世を去りかぬる絆しなりけり
  205. 我がために都合の悪き事どもは速やかにこそ忘るべかりけれ
  206. これの身の親の失敗作たるを誇りと成してみするのみかも
  207. マスクして行かねばならぬ現状を憤ろしと思ふのみかも
  208. リズムへと身をまかせつつ全身を楽器となして歌ふ楽しさ
  209. 夏の日にマスクをしても不審者と思はれぬ世になりにけるかも
  210. 海賊の王になるとて飛び出したその少年の行方は知れず
  211. いまはなき実家のそばのレストランで食べる料理は旨くしあらむ
  212. 思ひきやつちさへ裂くるみなづきの日の照るなかにマスクせむとは
  213. 今日はならずいづれまた良き折りあらむレデイースデーに行かばつたなし
  214. 少女らが青春の日々見届けてわれらはもどるもとのうつつへ
  215. 職場へと羽なき天使あらはれて心のそらになるあしたかも
  216. 気など合ふなかま十八ほどあつめ時をわすれて野球をぞせむ
  217. いま何を考へたるとひと問はばいまだ茂らぬ言の葉のたね
  218. 長雨とはかねて聞けどもさみだれのかく降り継ぐを知らざりしかも
  219. 喰うて寝てはた働いて限りあるいのちの一日終はりゆくかも
  220. いまできることをただしてこの先に如何な未来が待ち受けるとも
  221. カラオケは楽しきものを惜しむらくはわが歌声を聴くひとのなき
  222. 喰ふことは大切なれど寝ることもそれに劣らず大事なるべし
  223. 世のなかに野球の栄ゆるものならば左利きなる人かも増えむ
  224. 誇りをと探してみれば部屋のすみに幾年月の埃かぶれり
  225. ぬばたまの夢を追ひかけ東京に来しその人のその後知らずも
  226. なまじつか知識があれば漢字仮名表記のやみに惑ひけるかも
  227. 楽しみはひとのことばの通ぜざる猫といささか通じ合ふとき
  228. 野球をしせばピツチヤーに我はならむコントロールは定まらずとも
  229. 生来の飽き性にして世界一短き詩などものしたるかも
  230. なかなかに鳥にならずは沖合に浮かぶらつこにならましものを
  231. 【約1,500文字 旋頭歌】月草に荻きつね花桂の花と秋桜鬼の醜草また菊の花
  232. 世のなかに物憂きことは朝々にわが顔見ねばならぬなりけり
  233. コーヒーをひとくち飲めば梓弓はるけき国し思ほゆるかも
  234. 一年でもつとも暑き時なれば洗濯物の湿る間もなし
  235. 春はかすみ夏はさごろも秋はかぜ冬はしぐれに時ぞしらるる
  236. うかうかと嫌なることを思はずは時をわすれて仕事してしか
  237. 機械にて我があらませば好きなだけ頭のなかを見せましものを
  238. ひとの世にうつくしきものは私をつゆも思はぬ心なりけり
  239. 公園のコンクリートの階段に猫すはりたる秋の夕暮
  240. 言葉をしてなみする者は言葉ゆゑに滅ぶさだめに誰もありとぞ
  241. 何事も自分自身の問題と思ふひとをぞ神も嘉せむ
  242. ねがはくは世の悪風を払はむと立ちあがりけるひとと呼ばれむ
  243. いかばかり笑はれむとも法令に訴えられぬことの苦しさ