主に旧仮名文語による古風な作品群。稀に新仮名口語による現代風の作品。 青丹よしお
原則として、タイトルに和歌のようなものを、本文にそれを読む上で参考になるかもしれないことを書く。
各エピソードは独立している。気になったものだけを特に読まれたらよろしいかと思う(気になるものがなければ読む必要はないだろうことを含意する)。
なお、私の都合で予告なく当紹介文、エピソードの順序および各エピソードのタイトル、本文等を更新し、また一度公開したエピソードを下書きにもどすことがある。
1話あたり1,000字程度までを目安に執筆する。
不定期更新。
目次
完結済 全281話
更新
- 夕まぐれテールライトの赤い灯がぬれた路面に落ちてちらばる
- いつの日になくしただろうふかふかの布団がさそうあの寝心地は
- 仲春の見れば夜空に星々はうつつに光るなみだにもにて
- 見上ぐれば桜の花に雲かかり羊の聲す春の夢かも
- 時の川ながれは絶えて夢の苑に出立つ見ゆるむかしびとかも
- クの音は耳に親しむサの音は人の心に雲を呼ぶらし
- 風の強い日のことだったベランダに乾した布団が飛び立ったのは
- 情にやほださるることあるまじと心は常の旅路にあるを
- 初夏の候マクドナルドの隣では空の容器が風に転がる
- 楽しみはものなど飲むとうちあふぎよき掛軸の姿見るとき
- わたしはね女の子よとその人の薄桃色のマスクは言って
- 外つ国の花と思へど青丹よし奈良にしあれば古思ほゆ
- ※注 短歌ではなく旋頭歌を載す とかくして公の場にスマートホンをのぞき込むひとりとわれもなりにけらしも
- 敷島に源氏ありとふ人あらば後の世かけて友といはじな
- ※注 本文に長歌とそれに係ることを載す
- 苟も八雲の道を行く我ぞ万葉の書を枕に敷かむ
- 木洩れ日のにほふ腰掛け清くあれど草深くして座りがてにす
- 若き女の今様衣妙にして恐ろしきかも美しきものを
- 石上故郷恋し畳なはる青山脈のその懐し
- 看護婦の働く観れば古の采女もかくやと思ほゆるかも
- 久しぶりに日記付けむと取り出だせば一年余りすでに経にけり
- 黄昏の世にしもあれどよく喰はゞ暖かゝらば楽しくもあらむ
- かねてより病を防ぐ試みも過ぎては毒といふべかりけり
- ひさかたの青き風ふく夏の日に過ぎにし春の夢を見るかな
- 終日蒲団に臥して魂を左の胸に息まするかも
- むらぎもの心のいろにそめあげて桜の涙い継ぎ散りゆく
- おもしろきことを言はねば人間にあらざるとしも言ふが如しも
- 如何ばかりせみの鳴く音の大けれど人に優りてうるさきはなし
- 夢に見ることさへあらむ黒人とゲルマン人のをとこの巨躯は
- 自転車を半日漕いで口にした拉麺の味忘れえめやも
- 国人にわびの言葉の多くしていさゝか我は答へかねつも
- 誰からも食事の邪魔は御免にて人に知られで喰ふよしもがな
- ふるさとの高速道路のとなりなるふるきやしろに落葉つむらむ
- かかる身の知れては蕪村先生に叱らるるよと奮ひ起ちつつ
- わが友はいづれなりやと尋ぬれば置き去りにせし記憶なりけり
- 借りてきた猫みたやうに秋雨の電車のゆれに委ねつるかも
- 黄色なる日暮れの空にうばたまの烏のゆくを見れば楽しも
- 若ければ美しければちやほやとされやうものをいかにかはせむ
- 拉麺の口で長崎ちやんぽんを食べればすこしもの足りぬかも
- つきあひは上面にてもありたしとかく思ひをりわかりあへねば
- つながりは絶えてひさしくなりぬれど心のおくの友にこそあらめ
- 灰色の煤にまみれてうちひさす都に暮らすその人あはれ
- 横顔に娘のときの面影を見せつつ物を思ふ人かも
- ドリームズカムトウルーなるグループのなにがしの曲聴けばかなしも
- ひとの身のよごれやすきを知るときは戸を出づるさへもの憂かりけり
- あをによし奈良の都を一望にながめし夜は忘れざりけり
- 見たままが詩になるならばそのひとの眼はビードロの細工なるらむ
- 軒先にあそぶすずめをながむれば世を遁れたる心地こそすれ
- 遠くまで来ると思ふぬばたまの夜に浮かびたつ街を望めば
- 童にはあらざる身さへ時間とのおひかけつこに日が暮れてゆく
- わが体みどりになると思ふほど日にいくたびも茶を啜りけり
- くはしめの浮かぬ顔せる見るときは胸ふたがりて思ほゆるかも
- 蝶になりはた蝶を追ふひとになりながき春日を遊び暮らすも
- この国に桜を愛しむ民ありしとこの世のかぎり語り継ぎこそ
- ますらをと思へる我もClariSの声聴くときは涙たぎちつ
- いかで我益荒男子に生まれけむ未だに事を成し遂げずして
- 珈琲の目づまりおこす日はかくも胸糞わろき心地こそすれ
- この世より色も失せよと思ふほどつらくかなしきこの夕べかも
- 子どもなき国に生まれてわが怒り未だに暫し止まざる如し
- ますらをと世に生まれ出で怖しとは口の裂くとも言はじと思ふ
- 五月雲見つつしをれば鳥ならぬこの身の上は思ほゆるかも
- その人のうち笑むときは雨雲をはらひて真日の輝くごとし
- 生涯を賭すとぞ言はむ蟹の這ふライフワークと言はむよりかは
- わが心見つめてをれば泣き虫の子どものすがた見えにけるかも
- 小説のPV数や応援の数の推移は見れど飽かぬかも
- ねむられぬ病はやると聞くときは泰平の世も穏やかならず
- 平成は終はりけらしも花ぐはしさくらももこの眠ると聞けば
- 言葉ほどあてにならざるものはなし嘘をつくこそ人の本意なれ
- 安全が第一ならば移りゆくこの街なみは京の碁盤目
- 石炭をもっと燃やせと寒冷化する惑星に科学者の声
- 素人がある日突然山奥に分け入るように愚かしきこと
- 京都市は右京にありと吾が聞ける小川珈琲の豆が香ぞ高き
- 世の中にうまくいかざる折ふしはまくら辺にたつ伯母がかげかも
- 傷みたる珈琲豆が苦しみの声聞くごときこの朝かも
- 滝沢は絶えてひさしくなりぬれど名こそながれてなほ聞こえけれ
- 春過ぎて夏去りぬればうつせみの身に吹きそむる秋の風かも
- 辞めようと思うてゐたに辞めざるは何の因果と問ふもおろかし
- 人間に生まれてきたはいいけれどいまだに道を知らぬ顛末
- わがつけるスーツや革の靴のごと身はくたびれて汚れけるかも
- 幼子はよく泣くものと身にしみて思ひ知りたるこの夕べかも
- さくらなる三文字の大和言葉にて呼ばるる花のちるさま憐れ
- 男らと世の女らの和やかに相思ひつつ生きむ道もが
- 吾の如きおもしろからぬ人の子もありと知るべし物思ふときは
- 世の中に言葉にならぬ思ひあるうちは下手なる歌も詠むべし
- はだかにて生まれし身さへ日とともに失はれゆくものはありけり
- 夢を見ることを詩人の条件と吾は唱へむ寝ても覚めても
- コンピユーターゲームいざせむその先に仮令幾多の沼が待つとも
- 独りにて生まれて独り生けるごとき顔せる吾に秋の風ふく
- いつの代も社会はろくなものならずいささか吾は疲れけるかも
- うかうかとしてはネツトの大海に呑み込まるべし砂粒のごと
- あかねさす秋の夕日が天を衝くビルの谷間にしづみ入るまで
- 逆立ちをしてもこねこはこねこなり上から読んでも下から読んでも
- 春よりは秋がよけれど桜花さくころはそのかぎりではなし
- 音のなき世に生まれせばいかばかりのどけからましこのわがこころ
- 麗しくわかき娘のあるときは目こそ惹かるれ益荒男にして
- 依存する覚悟があれば何らかに依存しながら暮らしてもよい
- 共学の大学みればおぞましき心地こそすれ何となけれど
- ロヂツクを積み木のやうにつみあげて天へと届く塔になるまで
- 我ひとりこの世に立ちてあるごとく思ひつつありさびしきものを
- 君が代におよそいくさのあるときはきのこの山とたけのこの里
- しみじみと思へばふたりゐるやうな心地さへする冬は来にけり
- 神仏は心のうちに棲まはせて虫魚のごとく折にふれ見む
- 優しいと言はれるけれどその実はこの肉体が空つぽなだけ
- ちはやぶる神も見そなはせわが怒り天を焦がして即ち止むを
- メロスらはいまは罷らむ王宮の処刑台より友待つらむそ
- 珈琲を愛する者は度し難しその苦さをも愛すとぞ言ふ
- 句を吐かずなりぬるときに某はあの世へ逝くとひとに知られむ
- フランスの文学好む人等とは仲よくなれぬ心地もぞする
- 世の人の働くときに閑を得て浩然の気を養はむのみ
- ひとの子を思ひ通りに繰れるものといつの頃より思ひそめけむ
- 短歌とは心に深く思ふことを一気呵成に詠み下すべし
- 声優にならむと言ひて東京に出でにし人し思ほゆるかも
- 楽しみを探しに街へ出づるときふたたび人に生まるる心地す
- わたくしに俳諧的の野心あり成してならざることやあるべき
- うらぼんの月を踊りに更かしつつ阿波でこの世を過ぐしてよとや
- 人間のその尊厳のみなもとを思ふ日はあり死のくろきふち
- 酒を飲みたばこを吸ふもゆるやかにおのれを殺す刃にぞありける
- 人の世の五十年にして終はりなばいかに嬉しきことにぞありける
- 衣ほせば六甲颪ふきおろすさむき日和となりにけるかも
- あをによしならの都はさびれつつ街のなかにも鹿ぞのさばる
- 銀の匙でコーヒー粉をすくふ時しあはせになりたるごとし
- 外套の隠しのなかの懐炉などもてあそびつつ物をこそ思へ
- 賢しらに専門用語を使用して知つた気になる愚をしぞ思ふ
- わが顔をみにくく思ふことしあればけふもあしたも生きづらきかも
- 恵まるるかたちを頼み驕りたるひとはみながら醜かるべし
- カテゴリやジヤンルの溝のふかくして出会へたときの殊にうれしさ
- 情よりも理を重んずる我にして新たしき歌よみ出でむとす
- 世の中にだれとだれとがくつつくといふはなしほどつまらぬはなし
- 百年の俳句暗黒時代へとなるをさびしく思ふころかも
- ひさかたの光るかぜふく国原につばめとなりて天翔らまし
- 閑静な住宅街を歩きつつ悲しび起こる昼下がりかも
- 死にたいとつぶやく声が六畳の間にひろごりて消えて入るまで
- 世の中をガラス戸越しにながめつつ衰へぬべき我と言はめやも
- 優しさはポーカーフエイスのその下に隠しても持つ満面の笑み
- 心より愛する物のある時はやや減ずべし生のくるしさ
- 大和より極楽へゆく旅路にはさくらの花の絶えずも散らな
- どこから来てどこへ行くのか我と我が身に問ひながらみじろぎもせず
- 部屋中にコーヒーの香の弥漫するよき朝とはなれりけらしも
- 陸奥のひとの気質を受け継いでやや生真面目になりにけるかも
- 世のなかは楽しんだ者勝ちならし賢しらをして遊ばずは悪し
- 酒ゆゑにわが世のさかり失ふはやや惜しけども悔ゆとやは言ふ
- いざ金を手に握りしめあの漫画買ひに走らむ雨は降るとも
- 生活に余裕があればグローブにボールにバツト持ちて集はむ
- さけを飲み菓子を頬張りコーヒーを啜りつつ見るおぼろ月かも
- 見返りを求むることを恥とせむ愛は与ふる徳にしにあれば
- 身はいまだわが世の主役にならざらし名脇役といふにはあらねど
- わがもとに睡魔来たりて糖質を制限せよと囁きにけり
- 【長歌一首併せて反歌】被遮断悲哀陳述歌《ブロツクせらるる哀しびを述ぶるの歌》
- 世のなかに楽しきことの多くして我がよむ歌は日の目をも見ず
- 小説の作者の腕が確かにて安堵を得たる挿絵画家かも
- わたる世にことばを武器にも防具にも為さむと思ふ詩人のこころ
- 小説は論理的なり詩歌には論理の飛躍あるべかりけり
- 音楽に詞と曲あれどより多く詞の愛さるる心地こそすれ
- ありとある匂ひの記憶あらませばいかにわが世は豊かならまし
- 人柄の悪しきがために詩文さへ顧みられぬときぞ悔しき
- リ○トンの紅茶飲みつつ味はひに驚かれぬる春の夕暮
- 金あらばと思ふ仮定の実りなさ急に稼ぎの増えるものかは
- 我々の贔屓のチーム負ける日はわが世の夏も果てぬとぞ思ふ
- 好きなりしアニメ見むためすみやかに元気を出だせこの我がからだ
- 漫画家はやさしかりけりからつぽの身にさへしかと夢を見さする
- 饒舌になりたくなるを抑へてはわが作品に語らするかも
- 世のなかの真中にありて立ちつくすさくらのはなのちる夕かも
- そのかみにふたりで行つた動物園閉園になると聞けば悲しも
- そのかみのトルコの王も愛しみけるねこぞまことの宝なるべき
- 凡人といふと言へども特別の才あらざりと誰か知るべき
- 思ひきや使ひ捨てなるマスクさへ洗つて干してまた使ふとは
- 永の日をキヤツチボールをして暮らしこの世の春に飽きもせぬかも
- 世のなかに疑心暗鬼のあらしふくこの春辺こそものうかりけれ
- そのひとを思ひ出すときため息のもれもこそすれ年甲斐もなく
- おのれにはそれしか無しと思ふとき世を遁るべき道はひらけむ
- カラオケに行けずなる日を思ひつついのちのかぎりいまは歌はな
- 冗談のひとつも言へぬ我にして会社勤めを憂しとしぞ思ふ
- 何らかになれるとすればねこのごと気高きものになりたかりけり
- 現代の医療をみれば人間にやさしからざるこの世のすがた
- 青葉照る白日のなかいつせいに鳩とびたちて戦始まる
- 反対の方を向いてもむらぎものこころは君の方をこそ向け
- 私をなみして仕事をせしあとの独酌をするときの楽しさ
- 願はくはどこのだれでもない人になつてこの世を渡らむことを
- プロツトは中長編を書くときに役に立つべきものとこそ聞け
- 恋したきいきものにこそ生まれしか妻呼ぶねこの鳴く音かなしも
- 街中ゆかへり見すれば剱岳富山の名こそ伊達にあらざれ
- わが席の右のうしろにゐる人を一日思へば日は暮れぬらし
- 労働の市場におけるわが価値の低さ思へば胸安からず
- 【長歌】むらぎもの 心にうかぶ 事どもを そのまま言に なすべしと ひとは言へども 言霊の 幸ふ国の 民草と 生まれしからは 呑みかぬるかも
- 人間を失格になる一歩ほど手前に来つつ踏んばるごとし
- あなたへの結婚指輪このときは愛したことを示す証に
- 人の身の冷たかりせば情愛の炎も咲かずあだに消えまし
- 酒飲めば熱くなりたる心地せしむかしは遠くなりにけるかも
- 我がために都合の悪き事どもは速やかにこそ忘るべかりけれ
- マスクして行かねばならぬ現状を憤ろしと思ふのみかも
- リズムへと身をまかせつつ全身を楽器となして歌ふ楽しさ
- 夏の日にマスクをしても不審者と思はれぬ世になりにけるかも
- 海賊の王になるとて飛び出したその少年の行方は知れず
- いまはなき実家のそばのレストランで食べる料理は旨くしあらむ
- 思ひきやつちさへ裂くるみなづきの日の照るなかにマスクせむとは
- 今日はならずいづれまた良き折りあらむレデイースデーに行かばつたなし
- 気など合ふなかま十八ほどあつめ時をわすれて野球をぞせむ
- いま何を考へたるとひと問はばいまだ茂らぬ言の葉のたね
- 長雨とはかねて聞けどもさみだれのかく降り継ぐを知らざりしかも
- 喰うて寝てはた働いて限りあるいのちの一日終はりゆくかも
- カラオケは楽しきものを惜しむらくはわが歌声を聴くひとのなき
- 喰ふことは大切なれど寝ることもそれに劣らず大事なるべし
- 世のなかに野球の栄ゆるものならば左利きなる人かも増えむ
- 誇りをと探してみれば部屋のすみに幾年月の埃かぶれり
- ぬばたまの夢を追ひかけ東京に来しその人のその後知らずも
- なまじつか知識があれば漢字仮名表記のやみに惑ひけるかも
- 楽しみはひとのことばの通ぜざる猫といささか通じ合ふとき
- なかなかに鳥にならずは沖合に浮かぶらつこにならましものを
- 【約1,500文字 旋頭歌】月草に荻きつね花桂の花と秋桜鬼の醜草また菊の花
- 世のなかに物憂きことは朝々にわが顔見ねばならぬなりけり
- コーヒーをひとくち飲めば梓弓はるけき国し思ほゆるかも
- 一年でもつとも暑き時なれば洗濯物の湿る間もなし
- 春はかすみ夏はさごろも秋はかぜ冬はしぐれに時ぞしらるる
- うかうかと嫌なることを思はずは時をわすれて仕事してしか
- 機械にて我があらませば好きなだけ頭のなかを見せましものを
- ひとの世にうつくしきものは私をつゆも思はぬ心なりけり
- 公園のコンクリートの階段に猫すはりたる秋の夕暮
- 言葉をしてなみする者は言葉ゆゑに滅ぶさだめに誰もありとぞ
- 何事も自分自身の問題と思ふひとをぞ神も嘉せむ
- ねがはくは世の悪風を払はむと立ちあがりけるひとと呼ばれむ
- いかばかり笑はれむとも法令に訴えられぬことの苦しさ
- 寝不足がボデイーブローのやうにわが意識をけづる昼さがりかも
- 陶器へと口づけしつつ適温のコーヒー啜ることのよろしさ
- 世のひとと言葉をかはす折々に知れわたりたるわが退屈さ
- 酔ふために飲むといへども先の夜に飲みし新酒の味忘らえず
- 気の抜けたサツカーボールをながめては若かりし日を思ひ出づるかも
- ぺちやくちやとお喋りしつつ喰ふめしがなによりの馳走だつたりぞする
- あたたかき牛乳をもてはらわたを煖むる日は冬もしぞなき
- ともすればPVをみて一喜また一憂したる物書きのさが
- 嫌なやつで世に通りたる我なればどこへゆくにもひとりなりけり
- うつせみのひとは死につつわが子へと何かを託すものにてあるらし
- いにしへの人とよしみを結ばむとへたなるうたや句をよむわれは
- 機械ほど精巧ならぬ身のゆゑにかねにもならぬことをするかも
- うつくしき生き物にこそなりたけれ毛並つくろふねこまかなしも
- それがしは疫病神か何ぞかとまはりを見ては思はるるかも
- ふるさとを逃げだすやうにたちさりていくたびめかの花は咲きつつ
- 孤独なる道をあゆめとかみさまは我にいふらしさびしきものを
- 瞬く間にときは過ぐらし朝なさなわが乗り継げる列車のごとく
- かりそめにあす死なむともつねのごと暮らせる人はかしこくあるらし
- 天にます神は我らに大いなる苦痛をあたへ楽しめるらし
- たのしみはむづかしげなる書きものを思ひのほかに読み得たるとき
- かなしくてかなはぬものを何ゆゑにそのうた声をわれは聴くらむ
- 春の日をさびしかれとやひろき世に自慢のひとりむすめ旅立つ
- 世のなかに居場所ぞなきともぐりこむ電子のうみも浮世なりけり
- 金欲しと口にしてみておのづから恥づかしくなる春のゆふぐれ
- 千万の音が束なしその牙を我にむくとも足掻きやまめや
- わが国の伝統的の詩歌へとサブカルチヤーの息吹き込まな
- 晴るる日にやまのうへより見わたせばわがすみし世はちひさかりけり
- 感動をわかつ相手のなきときぞひとりなる身はさびしかりける
- プラトンもアリストテレスすらだにもソクラテスには如かずけらずや
- 世界一高きところへ愛ゆゑに押し上げられけるそのひと思ほゆ
- 若人に夢をたくすはわりなけどうら待つこころ抑へかねつも
- われと酒を酌み交はしたき人あらばいかにすきなる者とかは知る
- 弱みをしさらさば人につけいられねこまのごとくなりにけるかも
- いまだなほ裸眼なれどもくもりなき目で見ることぞあたはざりける
- ブラツクのコーヒーをもて大人へと変はらましかば労せざらまし
- 何のために働きたるとひと問はばわが尊厳を保つためとぞ
- 詩人と思へる我をけだしくもぽんこつとのみひとの見るらむ
- 世のひとのしごとに行くを見おくりて休みをとれば肩身せましも
- 移りゆくわがよみぶりをながむれば八雲の道にまどひぬるかも
- うきことの多きちまたに身を過ぐとわがはらわたに負荷はかけつつ
- 男手と我をな言ひそたわやめのちからにおとる折もあるべく
- このうたを世に問はずして身まからばあまりくやしと寝る間けづりつ
- たびに生きてたびに死にたく思ひつつ街のなかにや骨をうづめむ
- 人生が一度きりにてあらざればさらに耐ふべくあらざらむかも
- 酒こそは欠かせざりけれ汗するもこの一杯のためと思へば
- 若人の騒ぐをみればさるのごと思ほゆるかも老人にして
- いまの世の人らのうへに降りかかる自分らしさといふ呪ひかも
- 晴れとこそ思ひたりしか降るなかに洗濯物をほすがかなしさ
- 雑誌と単行本と電子とで読めども飽かぬこの漫画かも
- あきらめが肝心といふ世にしあればひとにすすめむ何事もなし
- わたくしを殺すとすれどなほやはり殺しかねつつものをこそ思へ
- みづからを英雄のごと思ひつつ飲むこの酒は美くしありけり
- いにしへのかしこきひとも申しけりただより高きものはなしとは
- 恋愛も結婚もできぬ世と思へばやはりいささか淋しかりけり
- しあはせの意をしらざればさけを飲み喰ひたきものを喰うてみるかも
- うち側の糖度を高みそと側を喰ひ残さるるその西瓜はも
- 常春のこの島にして音にきく大島桜生まれけらしも
- 恰好をつけても恰好つかざればださいテイーシヤツなどを着ていく
- 【長歌】惜しまるることのひとつは……
- 跋
おすすめレビュー
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★★★ Excellent!!!
短い歌ながら読むに興味深く、考えさせられます @touten
恐らく作者は全く意図されてないことでしょうが、人生を真面目に生きようと思う人には非常に示唆の多い歌群だと思います。見識と見解、覚悟と感性、寂寥と孤独、情と理性、それらをコントロールすべくもたやすくない現実も読み取ることができます。ふっと笑ってしまう時もあります。
俳句も読んでみたいですね。