時の川ながれは絶えて夢の苑に出立つ見ゆるむかしびとかも

 ときかはながれはえてゆめその出立いでたゆるむかしびとかも


「出立つ」は出て行って立つというような意味。

「むかしびと」はむかしのひと。


 眠るときに時間の感覚のなくなるさまを表現した。


 最初は第三句を「夢の国」とする案だった。しかしそれだと某テーマパークのようなのでもっとよい表現をさがした。次に出た案は「夢の岸」。これは初句の「時の川」という表現を受けてのものだがなにかひっかかった。流れが絶えたら岸もなにもないのではないか。そのようなわけでまた新たな表現を求めて今の形に落ち着いた。


はるそのくれなゐにほふももはな下照したでみちつをとめ」(大伴家持)という和歌(短歌)がある(当時はまだひらがなやかたかながなく漢字のみで表記していたらしいのを、ここでは漢字かな交じり文で表記した)。「苑」「出(で)立つ」の部分が共通しており、表題の作品はそれを本歌取りした作品ということになるかもしれない(何をもって本歌取りとするのかしらないので判断できない)。なんにせよ意識的無意識的にその古歌の表現を取り入れたことはまちがいない。


 また、その古歌のもとに成立したであろう「朧夜おぼろよひとたたづめるなしのその」(与謝蕪村)という句の影響があることもまちがいない。

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