祝福の王子

 王子様だ! お世継ぎだ!


 王様とお妃様のあいだに玉のような男の子が生まれ、国を挙げてのお祭り騒ぎになりました。人々は花を飾り酒を振る舞い、口々にお祝いを述べました。

 王子誕生の報は国の果てに住まう魔女にももたらされました。魔女は使者を労い、王子を祝福しました。誰からも愛されるようにと。


 祝福された王子は見目麗しく、勇敢な若者に成長しました。文武に秀でる彼に恋文が届かぬ日はありませんでした。


「私が欲しいのは皆からの愛ではない」


 王子の呟きに、繋がれた魔女はうっそりと微笑みました。


「そうでしょうとも」

「あなたが欲しい」


 あらゆる愛を得て、まだ欲するの? 魔女の眼は王子を映さない。

 王子は高らかに命じる。


「  」



(300文字 お題「さみしいひと」)

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